50話
そんな高レベルキャラのリリーナに対してユウキはどうかと言うと、レベルは『十』の人間族、職業は全能力値が上がる作製者だ。
全ての能力値が六十パーセントの成長率の為、同じレベルのキャラで見れば、攻守にバランスの良い能力値になっている。
とは言うものの所詮は『レベル十』、素の状態での能力値で比べれば、リリーナの十分の一以下だ。
『確か、一番高い能力値が魔力だけなんだよなぁ〜』
キング·オブ·キングオンラインで魔力とは、所謂MPと呼ばれる代物だ。
この値を十倍にしたモノがMPになる。
同じく、体力を十倍にしたものがHPとなる。
そしてユウキはと言うと、この魔力『だけ』は、レベル千クラスの高さを持っている。
勿論それには理由がある。
彼は作製者ではあったが、自分自身で武器や防具の素材集め、更には薬草採取等をやっていた。
その際、低確率だが『能力値アップ』のアイテムを得る事があった。
『力の石』や『体力の石』、『早さの実』に『知力の実』と言ったアイテムだ。
その中でも『魔力の果実』をユウキは重点的に得ていた。
これらのアイテムは、ゲーム内の市場でも出る事があったので、事有る毎に買っては八年間使用してきたのだった。
上がる数値は一〜三ポイントだったが、塵も積もれば何とやらと言うべきか、同レベルの他プレイヤーに比べれば、魔力以外はニ百倍以上の能力差を持つ事が出来た。
とは言え、所詮は低レベル。
レベル十での平均的能力値が『五十前後』の所、ユウキは『百から百五十』になっただけだった。
しかしユウキは、多少でも能力値を高くしようと考え、自分に武器や防具の作製依頼をしてくるプレイヤー達に、これら能力値アップアイテムを持ってくれば多少は値引きすると伝えていた。
ちなみに、魔力の果実だけはよく手に入る代物だった。
それと言うのも、この魔力の果実を必要としない戦士系の人達が、値引き用のアイテムとして持ち込む事が多かったからだ。
戦士系の人達は、基本魔法を使わない為、魔力の果実は市場でも余り気味だった。
魔法使い系の人達は、魔力や知力は自身の職業補正でドンドン上がる為、たかが三ポイント上がる程度の魔力の果実は見向きもしていなかった。
他の能力値アップアイテムは、魔法使い系が力や体力の石を、戦士系が素早さの実を使う為、あまり市場には出回り難い状況だった。
そうして余った魔力の果実を食べまくったユウキは、総魔力量『五十三万』という化け物へとなってしまったのだった。
『魔力お化け』『某宇宙規模の地上げ屋宇宙人モドキ』『お前のような低レベルがいてたまるか』などなど、酷い呼び名が裏で定着しているとは、ユウキ本人は知らなかったりする。




