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4話

『レベル8ゴブリン×1000召喚しました』


PC画面に表示された文字の後、クリスタに映る城壁上に、緑色の物体がウジャウジャと動き出す。

正直、この俯瞰状態から眺める自軍の動きは、少々気持ち悪かったりする。


「もう少し、近くで見たいが…そうすると全体が見難くなるし…困ったな」


そう呟くと、ユウキはまたメッセージを飛ばす。

今攻めて来ている友達…いや、こんな不意打ちとも騙し討ちとも言える事をする連中を友とは言えないと、心の中で歯噛みする。


彼らは全員、半年前にこのゲームをやりだした初心者達だ。

ユウキの作る武器や防具を大量に買ってくれるお得意様でもある。

何度かチャットをした事もあるし、今後このゲームを盛り上げてくれる存在になると思っていた。


それが、こんな不意打ちをしてくるなんて…


騙された事に腹立たしいが、簡単に信用した自分の落ち度にも、何とも言えない状況になってしまう。


今回の攻め方は、『運営に連絡すれば無効にしてくれるレベル』のやり方だ。

似た様な事をしたプレイヤーも多少は居るが、その殆どが得た領地没収の上、色々厳しいペナルティを食らっている。

運営としても、正面からのガチンコ勝負を求めているらしく、多少の策略、伏兵を置くとか相手の後方に脚の早い部隊での奇襲など、戦略と言える事には口出しする事は無い。


今回の領地戦に関しては、色々証拠もあるので、たとえ負けてこの浮遊大陸を取られたとしても、最終的には返して貰えると思っている。


ただ、戻ってくるまで時間が掛かる為、その間どれだけ領地内を荒されるかと考えたら…長い時間を掛けて作り上げた国だけあって、他人に荒されるなんて考えたくもない。


だからこそ今回、ゲーム的禁じ手戦法を使っているのだから。


このゴブリン大量設置戦略は、一番攻め手のプレイヤーが嫌う方法だ。

何しろこのやり方の最大の狙いは、『相手側のPCに負荷を掛けさせる』のが目的だからだ。


このキング·オブ·キングオンラインは古いゲームだ。

その為、必要スペックが低い。

最近流行りのフルダイブMMOなどは、専用の高スペックPCでないとマトモに動かす事すら出来ない。


必要スペックが低いと言う事は、参加し易い環境とも言える。

そのせいか、プレイヤーの大部分は、型落ちPCをこのゲーム専用に保持している位だ。

新規参加者は、新しいPCを使っている事が多いが、それでも最大五万とも十万とも言われるキャラが、所狭しと動き周れば、処理が追いつかなくなる。

それを狙って、大量のモブ戦力とも言えるゴブリンを召喚しまくっているのだ。

自分のレベル以下とは言え、既に城壁上には二千を超えるゴブリン達が、それはそれは某Gを思わせる様にガサガサと動いている。


ユウキ自身のPCにも、それなりの負荷が掛かるが、去年、高性能に買い替えたお陰で、まだまだ余裕がある。

だが、攻め手側のプレイヤーはと言うと、半数以上のキャラが『棒立ち状態』になっていたりする。

少しすると動き出すが、モーション途中でピタリと止まったりしている。

明らかに処理不足だ。


「このまま行けばタイムアップで何とかなると思ったんだが…無理だよな」


その呟きがフラグだったかの様に、攻め手側のキャラの動きが良くなりだす。


「あ〜、画面処理描画を最低に下げたか…まあ、そうするよな普通」


画面描画処理を最低に下げる。

単純な話だ。

大抵のプレイヤーは、描画を最高に設定している。

そうする事で、自身の動かすキャラの動きも滑らかになる。

その他、魔法や技のエフェクトも処理速度に関係してくる。

これらを下げられると、処理速度での時間稼ぎが出来なくなってしまう。


「主力部隊が間に合えば良かったんだが…」


チラリと画面右上を見ると、そこには全体マップと思われる地図が表示されている。

形状は日本列島そのままだ。

これは、開発スタッフの遊び心だったらしく


『使い道無さそうな海マップでも、日本列島にしたら人気出るんじゃない?』


と、そんなどうでも良い理由で作られたらしい。

まぁ、結果は惨敗、このゲームのプレイヤーは意外とリアリストだったらしいと、開発スタッフもインタビューで語っていた。

まぁ、食料の生産性も鉄鉱石等の資源も、どれも取れる量が微妙なせいか、他プレイヤーが選択してくれないらしい。

唯一の利点は、回復薬の元になる薬草類が豊富と言う事だが、それも他マップに比べてと言う所だ。


結局、不人気マップへのテコ入れとして海洋資源を導入する事になったのは別の話。

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