3話
宣戦布告とは、キング·オブ·キングオンライン内で、相手領地内に入った後『攻め手』である事を伝えるモーションの事だ。
これを行うと、行ったプレイヤーとその仲間達は、全員指定ポイントへと飛ばされる。
この指定位置は、守備側の指示する場所になる。
大抵は、守備側に有利な場所へと飛ばされる。
今回の場合は、守備側であるユーキの指定するポイント、巨大な城壁とその先に広がる海がある地点だ。
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浮遊大陸には現在、三種類存在している。
平地タイプと山岳タイプ、そしてユウキの所有する海タイプだ。
それぞれ利点欠点のある地形になっており、平地タイプは農業を中心とした産業をし易く、薬草等の産地として栄える事が出来る。
山岳タイプは平地タイプとは逆に鉱石が中心となり、鉄製品、武器や防具を中心とした産業をし易い。
そして海タイプだが、次のアップデートで追加される予定だった漁業が中心になるハズだった。
それと言うのもこのゲーム内では、初期の時点で釣りが出来た。
釣った魚は体力回復アイテム扱いになる。
回復薬が手に入り難い序盤には、とても活躍する代物だ。
ただ、それもある程度レベルが上がると、普通の回復ポーションや回復魔法が中心となる為、不要なモノ扱いになってしまう。
そこで運営が考え出したのが漁業だった。
別に魚を大量に捕まえるだけではなく、海の魔物や海専用素材の回収を中心としたクエストにしようと言う事らしい。
川を中心とした魔物は運用されているが、大型の海洋性魔物はまだ採用されていない。
そこで、海のマップでの漁業で戦い新しい素材をゲットさせると言うのが、アプデの主目的らしい。
ユウキが浮遊大陸でも不人気だった海タイプを選んだのも、このアプデを見越したから…ではなく、不人気だからこその選択でもあった。
不人気故『わざわざ手に入れようとするプレイヤーが少ない』というのが、彼の狙いでもあった。
現に、このゲーム内でも数少ない浮遊大陸持ちでありながら、ユウキを攻めようとする物珍しいプレイヤーはいない。
何しろ、攻める為のコストが大きい。
同数の広さの領地となれば、上位プレイヤー位しかいない。
更に攻め落としたとしても、実入りが少な過ぎる。
海タイプは、陸地が四割り、残り六割が海だ。
実質的には、こんな少ない陸地を無理に攻める位なら、中堅クラスのプレイヤーの平地タイプの領地を狙った方が得をするというものだ。
海タイプである浮遊大陸を『鶏肋』と揶揄して攻略掲示板に発言した上位プレイヤーに対し
『お前は曹操かよ』
『いや楊修だろ?』
『こやつを打ち首にせい!!』
『ひぇぇ!!』
と、ある意味『なんでや阪神関係無いやろ』のキング·オブ·キングオンライン版のテンプレとなっている程だ。
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今回は『攻め方の練習』と言う事だったので、ユウキの方に来た『領地戦の申請』に対してOKの返事をしてしまった。
賭けるアイテムは下級ポーション1個。
こんなあり得ない条件は普段なら無いのだが…申請の方法に間違いは無い。
だからこそ、不意打ちとも言うべき『宣戦布告』に驚き、対応が遅れてしまった。
本来なら、領地戦前に守備兵を城壁上に置かなければならない所をスキップしてしまった。
この為、攻め手側は無人の城壁に悠々と魔法やアイテムを使って登ってくるのだった。
ユウキの所持する浮遊大陸では、最大二万のNPC守備兵を雇う事が出来る。
兵種もドワーフの戦士からエルフの弓兵、更に隠し兵種のドラゴンライダーも雇う事が出来る。
だが、既に城壁上に敵…そう、騙し討で攻めて来た彼等は完全な敵…が、城壁上に半分も乗ってしまっている。
この状態を放置すると、一定時間経過で『占領状態』と表示され、こちらのNPC配置が一部出来なくなってしまうのだ。
仕方がなく、占領防止の策として、即召喚出来るモンスターを大量に配置し、遅延作戦へと移行した。
NPCの兵士を配置するには、それぞれの拠点で一時配置→目的地に移動と面倒なコマンド入力時間が必要となる上、NPCの兵を指揮する隊長を用意しなければならない。
それに対しモンスター召喚は、座標指定すれば良いだけなので、突発的な状況にはとても便利だ。
問題は、モンスター召喚は、召喚主のレベルによって強さが決まると言う事だ。
召喚主のレベル以下しか召喚出来ないが、召喚主のレベルが高ければ高い程、強いモンスターを召喚出来る。
ユウキの使用するメインキャラのレベルは10。
そう、たったの10レベルしか無い。