34話
そこまで確認すると、ふと気になる事が出た来た。
一つ目は途中にあった『不自然な空欄』、記憶が正しければココには上から『装備』と『フレンド』、『クエスト』に『ガチャ』『有料ガチャ』等のコマンドがあったハズだ。
装備はその名の通り、現在持っている持ち物の中から装備出来る物を選択出来るコマンドだ。
当然ながら、持ち物が空では意味が無い。
フレンドは、登録した人達の現在の状況、ゲーム内で活動しているのか、それとも不在なのかが表示される。
クエストは、現在受注しているリスト表示だし、ガチャに関してはその名の通り、それぞれのポイントやイベントに合わせた運任せのクジが引ける。
それが全て消えているのは何故なのか、今のユウキには当然だが分からない。
二つ目に気になる事は『精霊』、これはゲーム内では無かったコマンドだ。
この精霊があった場所には『システム』コマンドがあり、運営への報告や画面調整、一番大事な『ログアウト』があった…ハズだった。
『精霊…う〜ん、魔法…みたいなモノかな?でも、魔法と区別されてるし…』
ゲーム内で精霊は、設定として存在している。
直接プレイヤーに関わってくる事は無いが、NPC等の会話に度々登場する程度の代物だった。
『精霊かぁ〜、これクリックすると、何々の精霊とか召喚出来るとか?アレかな、次のアプデで搭載予定だった新スキル系統とか?』
ユウキ自身は、余り危険視はしていなかった。
ゲーム内でも精霊は、エルフの里に行くと、里内を表すエフェクトとして、蛍のように光を放ちながら周囲をフワフワと徘徊するように表示されていたからだ。
『うん、分からんモノは試してガッテ(ポチッ)』
何やら不穏な事を呟きながら『精霊』をクリックする。
それと同時に、ユウキの周囲を多数の声が囲んでくる。
まるでボソボソと聞こえるか聞こえないかくらいの少音量のラジオが、いきなり大音量に切り替わったかのような状況だ。
「やっと声聞いてくれた〜」
「ぬし様〜」
「あはははは〜ぬし様だ〜」
いきなりの事に思わず飛び起きるユウキだったが、直ぐに『ぐいっ』と引っ張られて、何やら柔らかいモノに包まれる。
「はひ?(何?)」
「貴方達精霊ね、何処から表れたの?!」
力強く抑えられて息が苦しくなるが、何とか首をグリグリとズラして抜け出そうとする。
「ぷはぁ!!」
僅かな隙間があったので、そこから顔を上げると、リリーナの滑らかな顎が見えてくる。
「うぇ?!」
思わず声が出てしまうが、今のユウキはリリーナの胸当ての上側に顔を埋めている状態になっていた。
ユウキの首元に胸当てが触れており、丁度柔らかい部分に顔が来ているのだ。
つまりは今、ユウキが息をしようと抜け出た隙間は、リリーナの胸の谷間だった訳で…。
「ひぇっ!!」
その事に気付いたユウキが離れようと力を込めると、それに気付いたリリーナが更に力を入れてくる。
『まてヤバい、!!この状況はダメだって!!ちょっとリリーナ?待て!!力強い!!ヤバっ息がぁぁぁぁ?!』
折角吸えた空気も、胸元へと抱き締めるリリーナによって無駄な足掻きとなっていった、つまり…
『息が出き…な…苦し…』
徐々に薄れ行く意識の中、必死にリリーナの腕をタップするユウキだった。
グッタリとしたユウキにリリーナが気付くまで後二分。




