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30話


「リリーナ大丈夫?重くない?」

「はいマスター、問題ありません」


そんな会話を先程から何度かしながらも、背中から抱え上げられた状態のユウキが、リリーナと共に空中を飛んでいた。

意外な事にリリーナの羽は、忙しく羽ばたく事も無く、優雅にゆっくりと動いていた。

それなのに二人の体は、グングンと持ち上がって行く。


それと言うのも『有翼族』のような翼を持つ種族は、鳥のように羽ばたく必要は無い。

何しろ、彼ら彼女らの持つ翼自身が魔力を持ち、それによって体を浮遊させているからだ。

簡単に言うなら、羽を通じて魔法が発動していると思えばいい。


翼を持つ竜であっても、羽ばたいているように見えるのは、ただ単に進行方向へと勢いを付けて進む為の動作であって、体を浮かせる事では無い。


その逆に、体内にある魔力を使い切ると、どれだけ体力があろうとも、自前の翼で飛ぶ事は出来ない。

崖から滑空する程度の事は出来るかもしれないが、基本的には飛ぶ事は無理となる。


今のリリーナは、自身の体内魔力を使用して体を浮かせている状態だ。

しかも、今いる世界には魔力が無い為、外から魔力を補充する事が出来ない。

つまり、体内の魔力を使い切ったら休息しないと回復しないと言う事になる。


「無理しなくていいからね?」

「いえ、全く持って問題ありませんマスター」


やけに良い笑顔でそう返事されてしまったが、本当に大丈夫なのだろうか?そんな心配をするユウキだったが、徐々に近付いてくる玉座の座席部分に注意が向いてしまう。


この玉座の間に設置してある巨大な玉座は、足が四つある椅子タイプでは無く、足元部分が箱型になっているタイプだ。

肘掛け部分は竜の彫り物がしてあり、正面から見れば立派な造りになっている。

さらに背もたれ部分は、五メートルはありそうな一枚板っぽいが、外枠部分に、こちらは龍が絡みついているような彫り物がしてあった。


全体を見れば圧巻の造りだ、全体を見れればの話だが…。

ただでさえ段差のある高い場所に設置されており、さらに八メートルもの大きさのある玉座だ、普通の身長では全体を見る事は出来ない。

何やら模様のようなモノが見えるな〜程度の代物だ。

視力の良い人であれば、その細かい造形が見えたかもしれないが、それでも下の一部程度の話だ。


そんな特殊な玉座を上から見下ろすユウキ。


「うわぁ〜すっげぇ〜語彙が死ぬ」


何を言っているのか分からないが、取り敢えず楽しそうに見えるユウキの姿に笑みを見せるリリーナ。


その本心はと言うと…。


『あぁ〜マスター、プニプニしてます、カワイイです、笑顔も素敵です、カワイイです、歳を取ったマスターはカッコ良かったですが、子供のマスターはカワイイ盛りです、素晴らしいです』


っと、こちらも語彙が死んでいた。

本人にその気がまったく無いのだが。

ユウキもまさか、自分を持ち上げているリリーナが、そんな事を考えていたなんて思いもしないのだった。


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