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2話

そうゲームだ。

目の前のノートパソコンに表示されているのは、MMORPG『キング·オブ·キングオンライン』と呼ばれるゲームだ。


八年前、当時流行ったMMORPGとして一世を風靡したが、最近ではデバイス型オンラインゲーム、所謂フルダイブ型と呼ばれる代物に押されまくっている代物だ。


キング·オブ·キングオンラインの題名通り、このゲームは『王』になる事が目的のゲームだ。

最初こそ他のゲームと同じく一般人からスタートするが、最初のチュートリアルで冒険者と生産者の選択からはじまり、その後を様々な選択肢から自分に合った職種に付いて世界を旅するゲームだ。


そして、様々なクエストをクリアし、さらに『ある条件』を達する事で『領地』を得る事が出来る。

そこからこそが、このキング·オブ·キングオンラインの醍醐味となる。


その条件の中で、簡単に領地を得る方法が『自分達のギルドを立ち上げる』事だ。

ある一定の仲間を募りギルド作製を選択すると、大陸の何処かにランダムで建物が建設される。

ただしこの場合、建物だけしか自分の物にならない為、高レベルの冒険者や広い範囲を領地とする者からは、格好の餌になってしまう。

さらに、建物に対する維持費が掛かる等問題が山積みだ。

一番簡単だからこそ、一番狙われ易い領地となる。


そして二番目に簡単な方法こそが、今、モニターの前にいる彼が食らっている方法、『他プレイヤーの領地に攻める』方法だ。

この方法なら、領地は持っているが防衛力の弱いプレイヤーは狙い目となる。


しかし、このゲーム内では、初期参加組の力が強過ぎる為、後発組の領地が、ギルドの場合と同じ餌にしかならない。

そこで運営側は、ある条件を付けた。


領地攻めを行えるのは、同じ規模の領地持ち、或いは、相手側と同等の価値あるモノを賭けれる場合だ。


同じ規模の場合、単純にその領地と同じ広さ、経済力、軍事力、その他仲間の多さなどが基準となる。

簡単に言えば、広大な領地経営のおかげで、数万人規模のNPCの兵隊を雇える国が、たった数百人の兵隊しか雇えない国には、攻め込むことすら出来ないと言う事になる。

ただ、その圧倒的な戦力差を覆せる程の何か、『高レベルプレイヤーを百人雇っている』と言った場合を除けば、同程度の相手としか戦う事が出来なくなっている。


そして、『同等の価値あるもの』を賭ける場合は、相手の同意が必要となる。

当然ながら、ちょっとしたレア程度の代物で同意するはずも無い。

そう、普段であれば『同意』するはずも無かった。



〜〜〜〜〜


その話が出たのは一週間前の事だった。

いつもどおりゲームをする彼の元に、一通のメールが届いた。

メール相手は、半年前からこのゲームをやりだした初心者達。


このキング·オブ·キングオンラインは古いゲームだからこそ、新規加入者には親切に接すると言う裏ルールの様なモノがあったりする。

勿論、プレイヤー全員がと言う訳では無いが、初期組、特に古参と呼ばれる人達程親切だったりする。

目の前の彼、『矢野ユウキ』もその一人だった。


彼は八年前、このゲームを始めた初期組の一人だ。

今では数少ない生産職トッププレイヤーの一人として、回復薬から武器防具まで幅広く扱っている。

特に武器類に関しては、初心者から高レベルプレイヤーに至るまで、かなりの人が注文に来る程だ。


それと言うのもこのゲーム、武器が消耗品だからだ。

『武器が消耗品だと言うのは当たり前だ』と言われそうだが、このキング·オブ·キングオンラインの場合、特に厳しくなっている。

各武器には『耐久値』が設定されていて、BOT対策として採用されているものだからだ。


『BOT』とは、AIプレイヤーの事であり、人が操作しなくても勝手に戦闘を行ってくれるプログラムだ。

BOTキャラは、主に使用者が寝ている時間帯にレベル上げをする、或いは業者が『リアルマネーで売れる様なアイテム』を手に入れる為に使用している事が多いと言われている。

その対策として導入されているのが武器や防具の耐久値だ。


このゲームでは、武器の耐久が0になると『一切の戦闘行為が出来なくなる』仕様になっている。

『いや、素手でも戦えるだろ?』と思われるかもしれないが、パンチモーションはあってもダメージは0になるよう設定されている。

これは、素手でダメージが入る様にすればBOTが無くならない可能性があるとのメーカーの判断だ。

防具に関しては、耐久値が0になっても戦闘行為は出来るが、当然ながら食らうダメージが大きくなり、


この耐久値設定をクソ仕様と罵る者もいるが、大多数のプレイヤーからは大いに支持されている為、その手の悪質業者が少ないことでも有名なゲームとなった。

その為、武器や防具を作製する生産者は、どのプレイヤーでも最初に確保するべきと攻略サイトに乗る程だ。



その一人であるユウキの元に、最近支援している初心者プレイヤーの一人からメールがあった。


『領地戦に協力してほしい』


と。

自分のキャラは生産職なので断ろうと思ったのだが、相手曰く『今度戦う予定の相手が、城壁持ちだ』との事だった。


城壁持ちとは自分の領地、建物だけではなく土地を少しでも持っている場合に設置出来るアイテムだ。

実際、ユウキの所有する領地は、某巨人が暴れまくるアニメとのコラボガチャで得た物だ。

どうやら対戦相手も同じ城壁持ちらしい。


『城壁越えの練習をさせて欲しい』との内容に少し考えたが、用意しているアイテムや使用する魔法の効果などを検証するだけと言われれば、普段から武器防具の販売で知っている仲だけあって断り辛かった。

オマケに、キング·オブ·キングオンライン初めて半年となれば、八年やってる身としては協力したかった。


それが、自身にとって甘い考えだと知ったのは、彼らが城壁前に集まった時の事だった。

そこに集まった初心者プレイヤー達が、本気の宣戦布告をして来たからだ。

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