295話
〜〜〜〜〜
「大変申し訳ありませんでしたああああー」
さっきまでのフレンドリーさは何処へ行ったと言いたい程の土下座ぶり。
ユウキの対面に座っていたハズのニアキスは、飛び上がるように横へとズレると、絨毯の上に土下座した。
『いや、この世界にも土下座って風習があるんだね〜』
などと、どうでも良い事を考えながらも、何と言うか、テンプレな展開になったな〜と、他人行儀な思考をしていた。
実の所、『面倒な事になったな〜』っと言うのが本音なのだが…。
「はあ…ニアキス『殿』、頭を上げてくれないかな?話がし辛い」
「いやしかし…」
「いいから。それに今なら誤魔化せるし」
そう言うと、チラッと周囲を見渡すユウキ。
その動きに釣られて周りを見るニアキス。
見てみれば、四方のエルフ達が何やら不思議そうな顔をしている。
さすがに扉の向こう側のドワーフ達は、この騒ぎに気付いていないようで、部屋の中に入ってくる気配は無い。
少し考えた後、オズオズと椅子に戻るニアキス。
ユウキはそこで、ホッとため息をつく。
「さっきも言ったけど、今この浮遊大陸内で君達人間族の言葉を理解出来るのは、俺を入れて三人だけ。つまり、この部屋に居るエルフ達は、何を喋っているか分からないって事だ。分かる?」
ユウキにそう説明されて、なるほどと頷く。
さっきまでニアキスが、勘違いから気軽に話し掛けていたが、その内容をこの『エルフと名乗る人達』は分からずにいた…と。
「だから、勘違いでバッサリ切られるような事は無いから安心して欲しい」
「勘違いって………」
「………他の二人がこの場に居なくて本当に良かったよ…うん」
ついポツリと発した言葉だったが、聞こえてしまったニアキスは、その場でガタガタと震え出す。
ここに来る前、バレシオスにある注意を受けていた。
それは………『彼ら彼女らの主であるユウキを侮辱しない』事。
下手な事を言ってしまえば、一瞬で潰されるとまで言われていたからだ。
その際も、『潰されるってのは物理的な話だよ』とまで言われてしまい、ユウキに対してのイメージは最悪だった。
一応相手は『子供』と聞いていたのだが、まさか本当に子供だったとは思っておらず、この醜態となってしまった。
ちなみに、ニアキスの中でのユウキのイメージは、『子供のような顔をしていながら全身筋肉の塊』と言う、現実世界にあり得なさそうな姿形だった。
ムキムキの筋肉に埋もれるような子供の顔。
夜中にでも見れば、大抵の人達が失神するような化け物を想像していたとは、口が裂けても言えない事実だった。




