294話
ルーナの子供達は、ユウキより三つ四つ上の為、そろそろオシャレに気を使い出す頃なんだとか。
そんな彼らが『カッコイイ髪型』と言って譲らないのがジャギーカットだったらしい。
その為、独自でその切り方をマスターしたらしく、実子達には大人気なんだとか…。
そんな彼女に頼んだ結果、三角の犬耳のような跳ねが出来た髪型になってしまい、リリーナ達からも『尻尾でも付けてみる?』と言われる始末。
いや、付けないよ?!付けないからな?!
やけに『尻尾』に拘るリリーナを抑えるのに、無駄に労力を使わされた気が………。
〜〜〜〜〜
なるほど、さっきまでこの浮遊大陸の住人達の話をしていたのだが、随分獣人の特徴に食いつくなと思っていたのだが…今のユウキの髪型が、獣人の特徴に似ていた事でそう思ったのだろうと推測。
あ〜、この勘違いはあかん…うん。
「えっとニアキス『殿』、多分勘違いしていると思うのだが」
「ん?勘違い?もしや獣人の子供では無かったのかな?それはすまない』
「いや違う違う。そうじゃないんだ」
さっきまでの軽い会話調を止め、改めて敬称を付ける。
散々リリーナに言われたのだが、本来なら呼び捨てがセオリーらしい。
何しろ自分は、曲りなりにも浮遊大陸の主だから、彼ら交渉者とは対等かそれ以上の話し方でなければならない…らしい。
よく物語である年若い王子や王女が、やけに偉そうな喋り方をするシーンがあったりするか、それは自身の立場からそう喋るように教育された結果な訳だ。
『まあ、そうだろうね。生まれたばかりで偉そうに喋る子供がいたら怖いし…』
どうにも明後日の方へと思考が飛ぶユウキだったが、すぐに気を取り直す。
一つ咳払いをすると、改めてニアキスの目を見ながら向き合う。
「俺の名はユウキ。この浮遊大陸の主だ。よろしく頼む」
リリーナとエルザに習った挨拶をする。
リリーナは、『主では無く王と名乗った方が』と最後まで食いついていたのだが、そこは却下しておいた。
全大陸を掌握した訳でも無いのに王を名乗るなんて…と、それっぽい言い訳をしておいた。
そう言えば、その話をしてからリリーナが外出する機会が増えたような?
何か引っ掛かる気がするが、それよりも今はニアキスの方だ。
テーブルを挟んだ対面を見ると、呆然としたニアキスが居た。
目を大きく開き、口はパクパクと開閉する。
はて、何故何も言わないのか?
そう疑問に思った瞬間………
「えええー?!」
それはそれは大きな声で、凄まじい叫び声を上げてくれやがりました。
扉外にいたドワーフ達が『何事?!』と部屋に飛び込んで来たのだが…。
これはアレか、俺が悪いのか?




