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285話

そんな二人の名を呼ぶと、一人は嬉しそうな表情を、もう一人は顔を顰め、何とも言えない表情を取る。

まあ、それぞれの立場を考えれば分からないでもない。


彼らの世界で言うなら『古代』との呼び名は、それぞれの種族が、その生命の限界値を越えた際に得る称号のようなモノだ。

通常のエルフは、六百年程を生きると言われている。


だが、たまにその寿命を越える存在が現れる。

そうした逸脱者が古代の称号を得るらしい。


これはドワーフも同じで、四〜五百年を生きるが、それを越えた瞬間に古代の称号を得る訳だ。

とは言うものの、越えると言っても高々百年越えた程度では呼ばれない。


最低でも、平均寿命プラス二〜三百年は越えないとダメだ。

目の前の二人は、その平均を越えた事で、古代の称号で呼ばれていた。


………っと言うのが『彼らの世界』での話になる。

では、ゲームの世界…ってか、設定ではどうなるかと言うと、彼らは『古代種』と呼ばれる別の種族扱いをされている。


まあ、追加種族として四年前実装されたのだが、それぞれ全能力値の成長率が、普通ノーマルのエルフやドワーフに比べてプラス二十パーセントされているだけだ。

シンプルだが、全ての能力値二十パーセントアップというのは強い。


後発組みのプレイヤーにはかなりの人気らしく、古代種族を選ぶ人は多かった。


そんな古代種族の二人だが、ユウキはNPCとして一名ずつ採用した。

当時は、武具や回復薬の注文が一段落した時期で、余裕があった。


そこで、追加されたばかりの二種族をそれぞれ戦士系と狩人系にし、スキル構成を武具作製と回復薬作製中心にした。

それぞれ初期から持っている採掘と採取のスキルも上げて行き、結果的には単体で迷宮ダンジョンに送り込めるキャラへとなった。


二人とも、レベルは二百二十であり、能力値のバランスも良い。

今回も、異邦人達の襲撃前に、それぞれ北と西にある迷宮へと送り出していた事で、浮遊大陸崩壊時のゴタゴタに巻き込まれる事は無かった。


その代わり、城へと呼び戻すのにリアルに時間が掛かってしまったのだが…まあ、戻って来てくれたので良しとしよう。

問題があるとすれば、リリーナ達が居ない事だ。


リリーナやエルザが居ない事で、自身の体が縮んだ事を何と説明すれば良いのか分からない。

うん、これは困った…タイミングが悪い。


周りのエルフやドワーフ達が、真っ青な顔をしているが、何があったのだろう?

古代の二人が何かしているようには見えないが…っと言うか、古代エルフの方は、やけにニヤニヤした顔をしているのだが?

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