281話
武器によるスキル発動も魔法を使う事も、一番必要なのは強烈なイメージだと把握した。
まあ、それだけじゃない事も分かったけど…うん。
それはさて置き、魔法に関してはもう一つ試したい事があったのでやってみた。
火以外の魔法だ。
今の所、火の魔法ばかり見てきた気がする。
ここは一つ、安全そうな水の魔法を。
結果から言おう。
水が凄まじい渦を巻いて地面を刳った。
いや、お前は何を言っているんだ?と言われそうだが、本当に眼の前で地面が刳れた。
丸い水の玉が現れたと思ったら、その場で高速回転しやがりました。
え、何これ、水玉型の螺○丸?チャ○ラ練り込んだ覚え無いんだけど?
つまり、風遁○旋丸たと思ったら水遁螺○丸だった件。
数秒回転してたと思ったら、いきなり消えて半円状に抉れた地面がコンニチハっと…。
どうしてこうなった?!
「………ユウキ様?」
や、止めて猫耳メイドさん、今の俺に話し掛けるの。
ただの水魔法だよ?水の玉を作って目標に投げる、そんな魔法だよ?
何でその予想を遥かに越える威力になってやがるんだよ?!
しかも、矢にも槍にも変化しないし!!
………この分だと、他の属性魔法もとんでもない威力になる恐れが。
よ、よし、取りあえず確認終わり!!
これ以上はしない、それが精神安定の元、うん。
〜〜〜〜〜
半分焼け焦げたり、半円に削れた平原て、一人の少年が半笑いをしています。
あれは、ヤケになった時にする笑いですね、私は知ってます。
私の名はフィアー、猫の獣人族の出。
年齢は不明………多分、記憶に残ってる思い出から、十七〜八だと思う。
十年前、両親や親戚、友達と共に心穏やかに過ごしてきた…はずだった。
あの日、村の外から現れた人間族に襲われた事より、一族はバラバラに。
バラバラと言っても、皆逃げ出せた訳では無く、その名の通り、体をバラバラにされていた。
理由は知らない。
私達が気に入らなかっただけかもしれない。
父も母も弟も、みんなバラバラに惨殺されてしまった。
人間族は複数人、全員が下品な笑い声を上げながら、獣人を殺していく。
私を含めた数人の獣人の娘だけが生き残り、その地獄を見させられた。
そこで私の記憶は途切れている。
何があったのか分からないけど、意識にモヤが掛かったかのように不鮮明だ。
その後の事は分からない。
気が付いたのは四年前…だと思う。
この浮遊大陸の大きな通りの真ん中で、呆けていたのを保護された。
自分でも何故なのか分からないが、そこに居たのは確からしい。
保護してくれたのはエルフの女性で、私が複数の人間によって鎖で繋がれ引き連れられて居たのを見たと言っていた。
自分にその記憶は無いのだが、見てたと言う彼女が言うのだからそうなのだろう。
実際ら自分の両手首には、無骨な鉄枷が付けられていたのだから。
エルフの女性が言うには、今居る場所が誰かの領地になった事で、そこに関係無い人間達が追い出されたのだろうと言っていた。
よくは分からないが、それがこの世のルールらしい。
感情を表さず、ただ呆然としていた私を心配したエルフの女性は、新たに領主となったであろう人に相談してくれたらしい。
直に駆けつけてくれたのが、有翼族のリリーナ様だった。
彼女は私を見ると、直ぐ様駆け寄り、手首の枷を解いてくれた。
後は流されるまま、リリーナ様の補佐役として、城付きのメイドをやっている。
私に過去の記憶も、家族も、帰る場所も無いから。
今日も私は、忙しいリリーナ様の代わりに、領主であり浮遊大陸の王でもあるユウキ様の側に居る。




