278話
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帝国騎士と聖騎士の調査が終わり、全員の名簿を作製して、それぞれの国に送る準備をリリーナがしている。
それを送ってしまえば、後は向こうからの返答待ちなんだそうだ。
その間、名古屋城に似た南の城にてノンビリしているユウキ。
現実世界だと名古屋港に当たる部分にある大きな港町。
その港町から西北西側の道を歩いていくと、この南の城に到着する。
城とは言うものの、普段は十人程の獣人達が維持管理をしているだけの場所だ。
それこそ、戦争で攻め込まれた時ぐらいしか使えない場所だ。
それだけに、今後はこれらの拠点もどうするか考えなくてはならない。
「いっそ、商業施設として開放するとか?でも、使いづらそうだし…」
城の北側にある平原で、軽く素振りをするユウキがそこに居た。
バレシオスの相手をした後は、精神的疲れから、さっさと寝ていたユウキだったが、やっと帰ってくれた事で、自分のやりたい事が出来るようになった。
そう、魔法とスキルの練習だ。
初心者用スキルである衝撃波を使えた事で、他のスキルも使えるかもしれないと張り切っていた。
「感覚は分かった。後は実践あるのみ」
一つ息を吐き刀を真っ直ぐに立てる。
頭の右側、右耳近くまで刀を寄せて後ろに少し傾けるると、左足を前に出す。
野球のバッティングフォームに似たその姿は、八相の構えと呼ばれる型だ。
とは言うものの、この構えは祖父から教わったものなので、ユウキ本人は『構えと言ったらこんな感じかな?』ぐらいの感覚でやっていたりする。
だが、構えた後は色々な雑念を振り払う。
祖父の教えだ。
無駄な考えや思考は刀を振る邪魔になる…と。
いや、あの人はどの時代を生きていたのだろう…。
少なくとも、令和の時代では無かった気がする。
頭を軽く振って、そんな余計な思考を霧散させる。
スキルを発動させるのに必要なのはイメージ。
前回発動したのは、頭の片隅で浮かべた『ゲーム上でのスキル発動シーン』
エフェクトの色や地面の上を這うように現れる形。
刀を振り下ろす瞬間、そのイメージを乗せる。
『ひゅん』と風切り音が聞こえた次の瞬間、ユウキの眼前を白い何かが走る。
風に煽られて砂埃が消えると、そこには前へと真っ直ぐに引かれた一筋の溝が出来ていた。
幅十センチ、深さは五センチ程度の溝だが、その断面は綺麗に切れていた。
「は、はは…出来た…スキルが出たよ、うん」
二度目とは言え、目の前の光景に少々引き気味になりつつも、検証を続ける。
結果分かった事だが………
自分のキャラが覚えていたスキルは、全て使える。
剣技に刀技、打撃技に槍技、長剣技に弓技など他様々。
剣技と刀技の二つは、実際にスキルを発動させてみたが、どちらも想定以上の威力だった。
他のスキルに関しては、対応する武器が無いとダメらしく、発動すらしなかった。
う〜ん、奥が深い。
そう思いながら、調子に乗ってスキルを交互に連発していたら気絶していた。
やっぱ、現実世界だとスキル使用し過ぎでも疲労するんだ………と、朦朧とする意識の中反省したよ。




