277話
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都市国家同盟の代表バレシオスがやっと帰ってくれた。
十日間の滞在許可期間、毎日『大型船を売ってくれ』と言い続けていた。
最終日など、『全財産を差し出してでも』と言い出したが、お付きの人達が必死に止めていた。
さすがにアレはどうなんだろう…可哀想に思ったが、リリーナからは
「戦略物資となる物を簡単に売ってはいけません」
と、バッサリ切られていた。
う、うん、そうだね、分かってるんだが、ちょっとは妥協を…
「他の世界の、それも人間族に妥協は必要ありません」
えっと…リリーナさんや、その言葉は俺にも刺さるんですが?
「マスターは、アレらと同じ人間族ではありません。まったくの別です」
「お、おう…」
すまない商人バレシオス殿、俺に説得は無理だったよ。
取りあえず、色々な品物を持たせてお帰り願った。
一応、食料品や飲み物、あと食器類や造形品って所かな。
食料品は、彼らの所に無さそうな物を持たせてみた。
ジャガイモや人参のような一般的な物も、味や形が違うらしい。
あと、トマトやキュウリは無い為、栽培方法込みで欲しいと言われてしまった。
勿論、リリーナが即却下していたが…君、辛辣過ぎんか?
食器類に関しては、陶器製を欲しがっていたので、コレに関しては俺の一存で許可を出した。
さすがに陶器程度なら問題無い…と思いたい。
結構な数を購入していったが、どうする気なんだろうか?
木箱一つ分の陶器に、食料品。
それと、数は少ないがナイフやフォークといった鉄製品も購入していった。
バレシオス曰く『とても質が良い』そうだ。
ナイフに関してはリリーナが渋ったが、「この程度の代物で連中がどうにか出来るモンじゃないよ」とのエルザの援護で意見が通った。
ナイフやフォーク類から、製造法が探られるかもしれないとの事。
いや、その程度なら問題無いんじゃないかな?うん。
飲み物は、瓶詰めのエール、所謂ビールを二十本程。
あと、ワインの類も五本程渡した。
紅茶の茶葉も袋詰して渡したのだが、バレシオスは大喜びしていた。
うう…ちょっと罪悪感ががががが。
何しろ、渡した代物の代金なんて、現代の金額に換算すると、精々十万円くらいのモノだ。
なのに、バレシオスから受け取った金額は、多分百万ぐらい…かな?
「彼らの金貨では、そこまでの価値はありません」
いやだからリリーナさん、バッサリし過ぎじゃないですか?うん。
「マスターは、もっと吹っ掛けるべきでしたよ」
「そこはアタシも同意だねぇ〜。相棒は甘過ぎだよ」
リリーナとエルザにダメ出しを食らった…。




