269話
対してバレシオス達の世界でのお金の価値観だが、金貨、銀貨、銅貨を使っている事は同じだ。
これは、それぞれ国が違っても同じだ。
それぞれの国で、造形の違う硬貨が作られているが、価値は統一しているらしい。
これは、それぞれの主要国同士での意見の統一らしく、戦争をしている間柄であっても、互いに同じとしているそうだ。
まあ、そこで『自国だけ価値を変更します』と言った所で、外との取引に影響が出てしまうだけになる。
それは不利だと分かっている為、通貨の価値の統一だけは維持しているらしい…ごく一部を除いて。
そんな彼らとの通貨価値だが、かなりの差があって、浮遊大陸としては同じようには出来ないでいる。
それと言うのも、浮遊大陸の金貨は、金九十パーセント、銀十パーセントの割合で作られているが、この異世界の金貨は、金五十から六十パーセント、銅四十から五十パーセントの割合で作られている為、金の含有量だけでも不平等な代物となっている。
つまり、浮遊大陸の金貨一枚とこの異世界の金貨二枚が、大目に見て同等の価値となってしまう為、どうしても取引がし難くなってしまう。
見た目も大きさも違う為、それらも含めて難しい。
ちなみに、バレシオスからこの異世界の貨幣を数枚、サンプルとして貰ったのだが、これを見たドワーフ達が一斉に怒り狂ったのだった。
曰く、『これ程造形も悪く、含有量もバラバラで、よくも貨幣として通用しているものだ』だそうだ。
まあ、金貨一枚にしても、金の含有量の幅が大き過ぎて、とても公平な代物とは言えない。
それでも流通しているのは、その程度の文明レベルだからとしか言い様が無い。
ある意味、この異世界全体の人の意識が『なあなあ』だと言える。
余程の不都合、例えば、金の含有量が十パーセント程度の、如何にも安っぽい金貨を大量に出してこなければ良い、そんな世界だ。
だからこそ、徹底的に職人気質のドワーフ達とは、根底から気が合わないと思われる。
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話が大分ズレたが、結局の所、バレシオスの言う金額など、浮遊大陸側としては全く旨味の無い話だ。
三倍の値だと言われても、下手をすれば、それ以下の価値になってしまう恐れがある。
これらの点から、浮遊大陸外の国々との取引はする必要性が無いのだ。
そんな事をこの三日間、拙い言語で不快にならないよう気をつけながら話たのだが、どうにも通じない。
『ならば二倍、三倍の値段で』と言ってくるが、違う、そうじゃないと何度言いそうになった事か…。
『世界観の違いがこれ程とは…』
愛想笑いに疲れながらも、心の底からそう愚痴るユウキの声は、誰にも届かない。




