265話
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この三日目、それぞれ一時間ずつ、捕虜の尋問を続けている。
午前中に四回、午後に四回、場所はこの南の城。
ユウキは、『南の城かぁ…、でも、形状が日本の城だからって名古屋城って名にするのも何だか変だし…』と、別の事で悩んでいたりする。
そんな南の城にて、エルザとリリーナは、捕虜からの情報収集を行っている。
捕虜とは言っているが、別に牢屋に入れている訳では無い。
単純に、リリーナ達にしてみれば、珍しい作りをした城の中の各部屋に、大人しく居るよう要請しただけだ。
それで彼らが出て行かないのは、城の出入り口をエルフとドワーフが二人ずつ見張りに立っているからだ、
別に、沢山の見張りがいる訳では無いのだが、初日に脱走しようとした捕虜達が、たった四人の彼らに挑んでアッサリ返り討ちに合ってから、全員が大人しくなっている。
捕虜だからと言って拷問する訳でもなく、それぞれの名前と所属、そして命じられた内容を控えるだけの日々だ。
それらを書類に書き込むと、後は放置。
最終的には、それぞれの国に戻ってもらう事になるが、その為にも詳しい資料を作らなければならない。
その為の尋問…いやこの場合、聞き取り調査の方が的確かもしれない。
何にしても、彼らの氏名等をしっかり記入し、それぞれの国のトップへと送る。
そんな作業なのだが、エルザには苦痛でしか無い。
ただてさえ、こんなやり取りが苦手で、何でも腕力で決めて来た彼女にしてみれば、こんな手間の掛かる仕事はイヤでしかない。
オマケに相手は『人間族』だ。
たとえ自分達の居た世界の人間達とは違っていても、好きになれる相手では無い。
『いっその事、船でも渡してそれぞれ放り出してはどうか?』とエルザは思ってしまったが、リリーナから反対されてしまった。
何でも『この世界の造船技術の低さから、コチラの船を………例え中古品であっても渡すのは危険』なんだとか。
そう言われれば仕方がない…と、ため息をつく。
目の前の帝国騎士を見ながら。
エルザの前に居るのは帝国騎士の一人で、資材を守っていた部隊の一人らしい。
らしいと言うのは、リリーナが殆ど覚えていなかったからだ。
『そんな人間が居た…ような気もしますわ』
そう言われてはどうしようもない。
実際、エルザの方も、倒した聖騎士の事を殆ど覚えてはいない。
精々、『一人だけ、銃を持った人間が居たな』ぐらいの記憶だ。
そう考えると、軽く頭を左右に振る。
余計な事を考えても仕方がない、今やるべき事は、コイツら帝国騎士から情報を得る…それだけだ。
『さっさと終わらせないと、黒い城に帰る事が出来ないからね』




