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264話

ユウキの居た世界のように、神に救いを求める事も無く、ただ、日の出と日の入り時に、一日の無事を祈る、それだけの存在だ。


「で、その神聖王国がどうした?」

「…彼らの相手をエルザに替えもらえませんか?」

「いや、替えてもらえませんかって言われても…」


真顔で答えるリリーナだが、聞きたい事はソコじゃない。


今現在、北の帝国の捕虜に対しては、エルザが尋問をおこなっている。

理由は簡単、帝国軍側がリリーナに対して『凄まじい拒否反応』を持っているからだ。


初日に、リリーナとエルザ二人で対応したのだが、帝国軍の兵士達は、リリーナの顔を見た瞬間、叫び声を上げたり泣き喚いたり、酷い者になると、虚ろな目で『許してください』と呟くだけになったりと、何とも言えない状態になってしまう。


どうやら、リリーナに倒された際の恐怖心が、心のトラウマにまでなってしまったようだ。


それと同じように、東の神聖王国の兵士達は、エルザを見て似たような反応を示している。

ただしコチラは、どちらかと言うと敵対心が前面に出ているように思える。


手足を折られたハズなのに、恐怖心よりも敵対心が勝るのは予想外だった。

これらを懸案して、帝国軍にはエルザを、神聖王国にはリリーナを担当させたのだが、それをリリーナが嫌がるとは思いもしなかった。


そこで、詳しく聞いてみると、どうやら神聖王国側の信仰心とやらが原因らしい。


なんでも彼の国では、天使信仰なるものがあるとの事。

なんだそれはと思っていたら、神聖王国の教えとして、天使と呼ばれる者達が、この世界の平和を支えている…らしい。


その辺りの情報は、いまいち入って来ていない。

それというのも、現在進行系で精霊達を使った情報収集を行っているのだが、精霊達は元々『自分達が面白そう』と思った所にしか行こうとしない。


その為、『宗教施設』のような場所には、なかなか近寄ろうとはしない。

結果、宗教に関しての情報が集まり難いのが現状だ。


ユウキもリリーナも、別に、異世界の宗教には興味が無いので、これと言って問題は無かった。

しかし、リリーナの話によると、彼らの信仰するその天使崇拝が、色々とあるらしい。


しかし…そんな理由だけで変更する訳にもいかない。


「悪いけどリリーナ、その願いは却下。引き続き、神聖王国側を頼むよ」

「うっ……………承知しました、マスター」


何やら葛藤があったようだが、渋々オッケーをもらえたようだ。

まぁ、エルザによると、『脅さなくてもペラペラ喋ってくれるんだから良いじゃないか』との事。


うん、それはそうなんだけど…。

それよりもエルザ、君の発言からすると…脅してるんだね?

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