260話
南側の城壁を離れ、反時計回りに東側城壁へ寄ると、エルザとサポート役のエルフ百人を回収。
一路港町へと進んで行く。
その間バレシオスはと言うと、某有名海賊漫画に登場した『神を名乗る雷属性の男』の驚愕顔のような変顔をしながら、ユウキ達の乗る巨大船を隅々まで見て回っている。
それと言うのもこの船、一応帆船の形を取っているが、海上を吹く風をモノともせず進んで行くからだ。
それどころか、完全な逆風であっても、それを切り裂きながら進んで行く。
バレシオスの知る常識を覆す代物だ。
何をどうやっているのか分からない。
どんな技術が用いられているのか分からない。
全てが謎の塊だ。
しかし、ユウキ側にしてみれば大した事では無い。
風を掴む操船技術に加え、風魔法を使った疑似動力により進んでいるだけだ。
普段であれば、普通に風を使った操船をするのだが、今回は早く戻りたい為、魔法による補助を入れているだけだ。
ただ、この風魔法を使うと言うのもコツがいる。
風魔法は攻撃魔法だ。
下手な威力では帆を切り裂いてしまう。
かと言って弱過ぎれば帆は膨らまない。
実は、魔力操作を必要とする高等技術だったりするのだ。
それをバレシオスが見た所で、模倣ドコロか内容を理解する事すら出来ない。
だからこそ、船内外を自由に動く事を許可しているのだ。
どれだけ見た所で意味は無いと思わせる為に。
まあ、今のユウキには、それ以上の厄介事があった為、バレシオスに構っている暇が無かったとも言うのだが…。
何しろ、何故か捕虜が百人超えてしまったのだから。
〜〜〜〜〜
「いやホント君ら、何してくれてんの?」
「申し訳ありませんマスター」
「スマン、何かこうなっちまった」
愁傷に頭を下げているのはリリーナ、悪いと思ってなさそうな態度を取っているのはエルザだ。
まずリリーナは、北側より攻めて来た連中を撃破。
その結果、六十人もの捕虜を連れて帰って来てしまったのだ。
そのまま放り出しても良かったのだが、その結果、勝手に居座られても困るので、一時的に収容したと言う事だ。
まあ、この船に余裕はあるので、問題は無いのだが、一人一人を介護してやる義理も無いと思い、全員船底近くの物置に放り込んでおいた。
一応、圧死しないよう気をつけながら積んどいたが、大丈夫だろうか?
そしてエルザ。
東側に向けさした所、何やら攻撃を受けたらしく、そのまま交戦。
で、突っかかってきた連中五十五人を叩きのめしてしまった…と。
本人曰く
「いやアレだよ、いきなり銃で撃たれたんだよ?そりゃ〜殴るよな普通?」
いや、普通の人は、銃で撃たれたら殴る所の話じゃないんだが?
ってか、撃たれたのに大丈夫なのか?
っと、少し心配して、聞いた所…
「あんな豆鉄砲、百発食らっても問題無えよ」
との事。
だったら、反撃しなくても良くないか?!
そう怒鳴りつけたらそっぽを向きやがった。
ダメだコイツ、早く何とかしないと…。




