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256話

この場に居るエルフ達は、ゲーム的に言うと、全員がNPCとしては高レベルに当たる八十台前後の者達になる。

っと言うのも、例の『武具や回復薬の作製中止』によって仕事を失った者達が彼らだ。


そもそも、レンウェを中心とした殆どの者達が、かなり高位のアイテム作製が出来る者達となっていた。

しかし、現在の浮遊大陸にそれらを必要とするような需要が無い。


結果的に、無職となった彼らに対する仕事斡旋に、浮遊大陸を守る兵士として雇う事とした。

浮遊大陸外周を守る城壁のお陰で、本格的に鍛えなくても良いと考えていたのだが…どうやら、エルザによって本格的な戦闘方法を仕込まれたらしく、魔法一つとってもこの威力だ。


ゲーム時の能力値を参考にすると、素のエルフ達のレベル八十であれば、力や素早さなどの能力値は四十程度、魔力は七十〜九十程度はあるはずだ。

さっきの下位魔法火矢は、その魔力をそのまま百人分一気に叩き付けた結果と言う訳だ。


目の前の傭兵達を含め、かなりのインパクトを与えれたので、まぁ…悪い状況では無いと思いたい。

結果オーライとしておこう…うん。


傭兵達の戦意は、目に見えて低下したようなので、後ひと押しでもしてやれば簡単に崩れる事だろう。

そう思案したユウキは、ドワーフ達の代表としてリーグを呼び寄せる。


さっきのエルフ達の魔法の余波から防御してくれた手腕から、彼らもかなりの訓練をしてきたと思われる。

このドワーフ達も、エルフ達と同じ元職人であり、レベルも同じ八十台となる。


能力値の方も、力が七十から九十と、エルフとは逆の値になっているはずだ。

そう考えて、エルフ達とは逆の方法で力を示してもらう。


先程のエルフの魔法攻撃で出来たクレーターの側に、少し大きな石の塊が飛び出ている。

直径一メートル程の大岩だ。

身長が一メートル二〜三十のドワーフからすれば、自身の体の大きさに近い代物に見えるだろう。


その大岩を指差しながら、ユウキは指示を出す。


「リーグ、あの大岩を切る事は出来るかな?」

「ふむ、その程度なら簡単だが…それでよいのか?」


その返答に、思わず目を見開くユウキ。

そんなユウキの表情が面白かったのか、リーグが大笑いする。


リーグの武器は、背中に背負った二メートルはある大斧だ。

その一撃なら、この程度の大岩を真っ二つにする程度は簡単だろう。


なら…


「リーグに命ずる。この大岩を『自身の思うがままの方法』で消滅させろ」


ユウキ自身、『何を偉そうな事言ってんだ俺?』などと思いながらも、芝居がかった身振り手振りで指示を出す。

それを見たリーグが、「おう!!」っと返事をすると、大岩に向かって歩いていく。


一体どんな事をしてくれるのか、ワクワクしながら見ていると、リーグは拳をボキボキと鳴らしながら大岩の直前まで来る。

『いや、まさか?!』と思った次の瞬間、『ドゴン』と言う鈍い音と共に、巨大な大岩が粉々に粉砕された。


呆気に取られたユウキに向かい、ニヤリと笑いながら振り返るリーグ。

その姿は、対峙する傭兵達に対し、十分な恐怖を与える事となった。


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