254話
沖合に居たバレシオスには、巨大な炎の柱としか見えていなかったが、その近くにいたマルコ達にとっては、地獄のような光景となっていた。
真っ赤な柱が眼前を焼き尽くし、凄まじい爆風が周囲へと吹き荒れる。
すぐ側に居た傭兵達など、まるで木の葉のように吹き飛ばされ、地面へと叩き付けられていた。
凄まじい勢いに弾き飛ばされそうになったマルコをハグノンが押さえる。
そのハグノンも、飛ばされまいと地面に剣を突き立てて、必死に踏ん張る。
そんな炎を放ったエルフ達はと言うと、前面に立っているドワーフ達が、大盾で壁を作り、爆風を防いでいた。
ユウキの前にも、いつの間にか巨大な盾でガードするリーグの姿があった。
そして、そんな光景を見たユウキはと言うと…
『予想以上の攻撃力、どうしてこうなった?!』
っと、遠い目をしている。
とは言うものの、目の前の爆発にも一切慌てる事も無く、ただジッと佇むその姿に、エルフ達は憧憬の眼差しを、ドワーフ達は驚愕の表情を向ける。
それに対して人間側はと言うと、動揺すら見せないユウキに、恐れの感情を向けてくる。
まあ、目の前の惨状を見ればそれも仕方がない。
何しろ、直径1キロ近い巨大なクレーターが出来ているのだから。
深さは一メートル程だろう。
これだけ近距離での爆発でありながらも、思った程の被害が出ていない事から、殆どの爆発力を真上へと逃したのだろうとユウキは予想していた。
小声で後ろに控えるレンウェへと聞く。
「今の魔法は?」
「はい、見た目派手な方がよろしいかと思いまして、下位の火の魔法を全員に唱えさせました」
レンウェの返答は、ユウキの予想以上の答えだった。
火の魔法だったのは分かっていたが、まさか最初に使える下位の魔法とは思ってもみなかった。
ゲーム内であれば、目標、この場合はモンスターだが、一体の敵に対して火の魔法を同時に唱えたとしても、あんな爆発をする事は無い。
小さなエフェクトが広がる程度のはずだ。
まさか、あんな大爆発を起こすとは、思わなかった。
チラリと傭兵達を見ると、最早半数以上が腰を抜かしていた。
その気持ちは分からないでもないが…。
肝心の代表であるマルコと傭兵隊長のハグノンを見れば、ハグノンは目を大きく見開いて驚いていた。
マルコの方はと言うと…
「馬鹿な…こんな…馬鹿な…こんな…」
っと、同じ言葉を繰り返し言うボットへと変貌していた。
この二人に関しては、予想以上の反応だったので、まぁ…良しとしておこう。
これだけのモノを見ても反抗する気満々たったらどうしようかと思ったものだ。




