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251話

先程までの、気怠そうな態度で出る言葉では無い。

目の前の少年が発した突然の声に、マルコは固まる。


「………はあ?」


驚愕の目をユウキへと向ける。

だがユウキは、何ら気負う事無く、寧ろ面倒くさそうに言う。


「だから、戦争、そう言っている。何を不思議そう、顔、している?」


そう言うと、コテンと首を傾げるユウキ。

そんなユウキの姿に違和感を抱くマルコ。


さっきまでの態度は、間違いなく戦争を回避したがっていた。

なのに今のユウキは、面倒そうな態度はそのまま、仕方がないから戦争しようと『本気』で考えている。


「君は分かっているのか?戦争だぞ、死ぬ事になるんだぞ?」


慌てたマルコがそう言う。

今まで色々な交渉事を行って来た。

その中には当然、戦争直前にまで発展した事もある。


だが、戦争行為は互いにとって失うモノしか無い。

だからこそ、折衷案を持ち出し、有利な状況へと持ち込む事が出来る。


彼マルコは、そうやって実績を作り上げて来た。

だが、目の前の少年は違う。

自身の要求を伝え、聞かないのなら戦うと言う、シンプルな答えしか持っていない。


マルコの考え方が間違っている訳ではない。

ただ、その思考回路は、自分達の世界での、ごく普通の人間基準だと言う事だ。


他の世界から来たエルフやドワーフ達は兎も角、マルコの知る世界観とも違う世界から来たユウキとも、価値観が合う事は無い。

そもそも、ユウキに取っての浮遊大陸は、自分のモノでは無く、エルフやドワーフ、獣人族やその他の各種族達のモノとの認識だ。


それを『勝手に譲歩して分けてやろう』などと思う事はしない。

ここに、ユウキとマルコの意思のズレが生じていた。


マルコとしては、ココで戦争をチラつかせつつ、時間を掛けて少しずつ、領土を都市国家同盟の物とする計画だった。

だからこその徴発行為であり、戦争をネタにした脅迫行為だったのだが…その全てが裏目に出てしまった瞬間だった。


「いやいや少年、よく考えたまえよ。いいかい、戦争とは人と人との殺し合いだよ?君だけではなく、他者も巻き込んで死」

「交渉、もう終了。さっさと帰って、準備しろ」


それでも説得しようとしたマルコを遮り、無造作に右手を振るユウキ。

そして、そんな二人を見て天を仰ぐ傭兵隊長。


交渉は完全決裂であり、最早戦うしか道は無い所まで来てしまった。

この事をしっかり認識していたのは傭兵隊長のみだった。


戦いに疎いマルコは、『ただ何も知らない子供が駄々を捏ねている』だけだと、この時点でも思っていた。

その勘違いによって、南方での戦いが発生しようとしてい。

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