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249話


バレシオスの周囲には、数人の人達が立っていた。

バレシオスの椅子の後方左側には、手に酒瓶を持った男性が立っている。


膝丈までのキトンと呼ばれる白い衣装を着て、偏袒右肩へんたんうけんと呼ばれる右肩を出した状態で立っている。

彼の役目は、バレシオスの喉の潤いを保つ事だ。


その反対、後方右側に立っているのは、手に大きな日傘のような物を持った男性だ。

彼も、同じようなキトンを着ていて、バレシオスを太陽の光から守る事が役目となっている。


そんな彼らから離れた場所、船縁に近い四隅に、革鎧を着た兵士が四人立っている。

彼らの役目は、バレシオスの護衛だ。


大海原の上、余程の事が無い限り、暗殺される恐れは無いと思うが、それでも彼らは周囲に目を光らせている。

都市国家同盟ナンバーワンのバレシオスにもしもの事があれば、国内が荒れる事は間違いない。


主に、国内での位置付け四位のアントニウスとその一派は、間違いなく自身の地位を上げようと動くだろう。

無論、最悪な方向へと。


今は中立を歌う者達もまた、それぞれ動き出す。

結果、バレシオス一人の死で、内戦が勃発する可能性が高い。


バレシオスを支持する者達にしてみれば、早く王政にして、バレシオス自身を祭り上げたいと思っている。

それが本人には煩わしく、余計に冒険心を擽られてしまう事となる。


そんなバレシオスは、今の現状を楽しんでいた。


『未開な地』だと思って来てみれば、巨大な建造物を作れるような存在が住む大陸だと言う。

しかも、そこを治めているのが年端も行かない子供だと言う。


その子供は、背の低い老人と背の高い女性達を率いて来たと言う。

更に彼らは、我々の撤退を要求していると言う。


中々に面白い話だ。

そう思ったからこそ、自身の側近を送り出した。


マルコは、バレシオスの側近の中では一番の若手であり、その口先だけで、他の大国二つを手玉に取った実績がある。

北の帝国には、定価の二倍の値段で奴隷を売り、東の神聖王国には、定価の三倍の値段で火薬を売る。


彼ら二国が、手に入れたそれを使い、互いに争う事で、南の都市国家同盟は安全になり、懐が潤う算段だ。

更にお金だけではなく、それぞれの国内に、バレシオスの息の掛かった店舗を数店出す事にも成功している。


何しろ、元々人口の少ない北の帝国は、常に戦えるだけの兵士を求めているし、その為であれば、国に取って潜在的敵国となり得るバレシオスの手駒を国内入れる事も躊躇しない。

それは神聖王国も同じ事だ。

彼らも、最新の武器である銃を効率的に使う為には、バレシオスに配慮しなければならない。


そうして、二国間の戦力をバランス良く増強する事で戦争を誘発。

その結果、都市国家同盟に対する安全性と国内需要が上がる事となる訳だ。


何しろ、帝国と神聖王国、そのどちらかが、資金的にも余裕のある都市国家同盟を攻めようと行動すれば、空いた方の国が攻め込んで来るのだ。

だからこそ、内戦など発生させる訳にはいかない…のだが、どうにもバレシオスが安全な場所に引き籠もる事を良しとしない為、周囲の者達の苦労が耐えない。


傍らに置いてあった酒を一飲みし目を開く。


「さてマルコよ。今度は何処まで踏み込むのかね?」


バレシオスにしては珍しく、楽しそうな笑顔を見せながら呟く。

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