243話
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ハグノンが手を伸ばして来た瞬間、後ろに控えていたドワーフ達が動き出す気配をユウキは感じた。
『いや、ここで動かれちゃ不味いだろ?!』
咄嗟にそう判断したユウキは、背中に担いていた刀を左手で抜刀し、そのまま自身の体の前を通過させつつ右下から上へのすくい上げを行った。
結果から言うと、すくい上げた瞬間に衝撃波が発生し、ユウキの右側に一筋の線を作った訳だ。
『待て!!何で衝撃波が発生した?!ってかコレ、剣技スキルか?!』
衝撃波が出た瞬間、見覚えのあるエフェクトが見えた気がした。
白っぽい斬撃を形作ると、ユウキと眼の前の男の間に、横一文字の線を作り出す。
しかも、結構長い線が引かれている。
『よ、よし落ち着け俺。まずは刀を納刀…ダメだ、手が震えてくる…ここは肩に担ぐ形にして…うん』
眼の前の人間達にしてみれば、無表情で緩やかな動きで構えているように見えるかもしれないが、張本人の心の中は『刀を取り落とすな〜』っとか『手の震えがバレませんように〜』とか、色々な事を考えていた。
所謂『テンパった』状態とでも言う所か。
背後に控えていたドワーフやエルフ達の一部には、ユウキの震える手元が見えていたが、『あんな幼い姿でも人間共相手に構えている…なんと健気な』などと、変な勘違いを発生していた。
自分の事で精一杯のユウキは、その事に気付いていなかったのだが…。
「………」
眼の前の人間族の男を無言で睨み付けるユウキ。
実際の所、今喋れば、声が震えてしまう予想しかない。
だから喋らない。
『よしよし、だいぶ落ち着いて来た。うん…俺大丈夫…大丈夫』
大きく息を吸うと、ゆっくり吐く。
数度繰り返すと、先程の状況を考える。
ユウキが放った技は、ゲーム内でプレイヤーが最初に覚える事が出来る攻撃スキルの一つに似ていた。
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キング·オブ·キングオンラインで、最初にキャラを作った後、所謂チュートリアルからスタートするのだが、その際に教えられるスキルが三つある。
一つ目が治療スキル。
これは、魔法と違い使用時間制限がある。
回復魔法であれば、必要魔力がある限り何度でも唱える事が出来るのだが、治療スキルの場合、待機時間が発生する。
その上、回復する量は僅か五〜十であり、チュートリアルでしか使わないスキルだ。
二つ目が衝撃スキル。
これも制限のあるスキルだ。
小さな衝撃波を指先から対象一体に対して放つ事が出来る。
このスキルに関しては、意外と使い道があったりする。
攻撃力は一〜十程度だが、ソロ活動をする際、敵を一体ずつ釣り上げるのに重宝する。




