240話
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ユウキが呆然としてる間にも、ドワーフとエルフ達は、次々に降下してくる。
彼らの使っている箱のような物は、ブレーキ付きの滑車だ。
構造としては、内部に二つのローラーが有り、そこにロープを八の字を描くように差し込む。
それぞれのロープが交差する所に、木の樹脂から作った滑り止め、現実世界で言う所のゴムパッドのような部品が入っており、ハンドル部分に付いているバーを握り締める事で内部のロープを挟み込み、降下速度を調整する事が出来る物だ。
これは主に、ドワーフ達が掘っている坑道で使われている道具だ。
ドワーフ達が鉱石を掘っていると、時に方向も位置も関係無しに、横向きから斜め上へ、また水平に掘ったかと思うと垂直にと、鉱石の有る方へと進んで行く。
その為、坑道移動時に、ロープを垂らして上へ下へと行かなければならなくなる。
上は兎も角、下への降下は面倒だと言う事で、彼らが独自で開発したんだそうだ。
ちなみに、ゲーム内ではそんなギミックは話にも上がらなかったので、勿論ユウキは知らない。
他にも、ユウキの知らない物が浮遊大陸内には多く、そういった物を見るのがユウキの楽しみの一つた。
「アレを戦いの場で使うんだぁ〜」
ユウキの気の抜けた声がポツリと漏れるが、そうしている間にも、エルフとドワーフが降りて来る。
先に降りた者達は、それぞれ武器を構えて整列している。
彼らに対する訓練は、全てエルザに任せていたか、眼の前のキビキビとした動きを見ると、かなりの練度が見受けられる…多分?
ユウキ自身は軍事には疎い為、感覚でしか分からない。
それでも、素人とは思えない動きだと思われる。
それを見ていた人間側も、小型の盾を片手に隊列を整えている。
独特の形をした槍を持って、前面に槍衾を形成している。
槍としての刺突部分の中程に、アール状の引っ掛け部分が付いている。
イタリアで使われていたロンコーネと呼ばれる槍が、形状として近いだろう。
柄の部分がそれ程長くは無いが、数を揃えられると面倒そうな武器だ。
遠くに居れば槍として突き、近くに寄れば引っ掛けて転がす、或いは内側の刃で傷を負わせる。
そんな特殊な槍が、五十本は飛び出している。
残りは剣や斧と言った武器を構えている。
遠距離武器である弓が少ない事が救い…のようにも思える。
ただ、武器や防具を見たドワーフ達が、馬鹿にしたような態度を見せているので、それ程強い武器では無いのかもしれない。
そこまで思考したユウキは、リーグに待機命令を出し、人間達の方へと歩いていく。




