239話
正直、ブルシオ傭兵団がどうなろうが知った事では無いが、こちらに火の粉が飛んで来ては堪らない。
そう思ったハグノンが、ブルシオ傭兵団の前に出ようとした瞬間だった。
ブルシオ傭兵団の二人が吹き飛ばされた。
ハグノンには、何が起こったのか分からなかった。
だが、真ん中にいたブルシオ傭兵団隊長の左右にいた部下達が、突然空中を舞ったのは確かだ。
ぐしゃりと言う音と共に、『ぐえっ』と、何やら潰れたような声を上げつつ、大柄な男が二人倒れている。
「な、おいガキ!!何をしやがった?!」
ブルシオ傭兵団隊長が、真ん中に居た少年の胸倉を捕み上げて叫ぶ。
ハグノンにしてみれば、左右の連中が吹き飛ばされたのだから、あの少年よりも左右の人物が怪しいとなるはずなのに…。
そちらに食いつかず、一番弱々しい少年へと突っかかる時点で、ブルシオ傭兵団の底が知れると言うものだ。
取りあえず止めなければとハグノンが歩を進めた瞬間、少年の周囲から
凄まじい殺気が飛び出す。
思わず腰の剣に手を伸ばして固まる。
ハグノンだけでは無い。
その場に居た傭兵全てが凍りついたように動きを止める。
「はぁ〜、人の話、ちゃんと聞く、するべき」
たどたどしい南方語だったが、眼の前の少年は、呆れた顔をこっちに向けてくる。
その背後に無数のロープが垂れ下がり、上にいた人達が次々なと落下して来る。
ハグノンはそれを見て、即座に指示を出す。
「全員構え!!上から来るぞ!!」
〜〜〜〜〜
「さて、どうしたもんかな」
こちらの言語で出た一言が、色々な事を諦めさせようとしてくる。
最初は友好的に行こうと話し合ったハズだったのだが、何故か戦闘状態に突入してしまった。
いやホント、どうしてこうなった?
そう言うしかない状態。
そうなった原因は、まぁ…分からないでもない。
いやはや、まさかいきなり罵声から始まるとは思ってもみなかった。
それに激怒したリーグとレンウェの『張り手』一発で、人間が吹き飛ばされる所を見てしまった。
うわ〜、人間ってあんなに簡単に吹き飛ぶんだ〜っと、ついつい思ってしまった俺、悪くないと思う。
遠い目をしていたら、二人の指示の元、上で待機していた面々が喜々として落下してきた訳で…。
それはもう、髭モジャのドワーフ達の目元がとても嬉しそうな感じになってるし、無表情がデフォルトのエルフ達など、口元緩みまくり。
うん君達、実は暴れたいだけだろ、本心は?
「どうしてこうなった?」
「主様、ご指示を」
エルフのレンウェが、コッチに指示を求めて来るけど、俺言ったよね?話し合いだって、言ったよね?
リーグもニヤニヤしてないで止めてくれよ!!
ほんと…
どうしてこうなったぁー?!




