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235話


意識が上の空だったユウキだが、その間にも船からリリーナを除いた全員が、城壁上に集合していた。

彼らの役目は、一にユウキの護衛、二に侵入者の対応、この場合城壁下に居る人間達の排除となっている。


これち関しては、ユウキの居ない間に、リリーナとエルザを中心にして取り決めた事だった。

リリーナが得た情報…かなり偏った情報だったが、それによれば彼ら侵入者達は、この浮遊大陸を『自分達の物にしようとしている』訳だ。


正直に言うと、リリーナの暴走はそれらも原因だったりする。

元々有翼族は、人間族を見下す傾向にある。


それは千年以上前、人間族が有翼族を『同じ人』として認識せず、モンスターのひとつとして狩った歴史があるからだ。

当時から有翼族は、絶対数が足りなかった。


その為、数の暴力で攻めてくる人間族に、何度も煮え湯を飲まされて来た。

個人の能力であれば、圧倒的に有翼族が強い。


しかし人間族は、個人の力を数で覆して来た。

彼女達有翼族が、範囲魔法を一つ唱えている間に、人間族側から下位の魔法が絶え間なく降り注いでくる。


いくら何でもこれには勝てない。

その後、有翼族と人間族との間で休戦となり、一応『人族』としてカウントされる事となったのだが、長寿である有翼族は、人間にとっての遠い過去の出来事が、昨日の事のように思い出される。


こういった話は、実はエルフやドワーフにもある。

千年以上前、人間と争って来た事から、人間族への無意識の恨みが根強く存在する。


唯一例外と言えるのはユウキだけだろう。

この浮遊大陸に来た当初のユウキを住人達は不審の目で見ていた。


人間と言えば、エルフを見れば発情して連れ去ろうとし、ドワーフを見れば直に高級な武器や防具を作れと要求する。

彼らの知る人間族と言えば、そんな奴らばかりだった。


だが、ユウキは違った。

浮遊大陸に到着すると同時に、どうやって作ったか分からない城を大陸中央に建てた。


その後は、周囲のドワーフやエルフの村を自ら周り、各種職人として雇入れるといった行動を取った。

勿論、最初は誰も良い返事をしなかったが、それぞれの村で燻ってた者達、所謂『半端者』として忌み嫌われていた者達を中心に活動し始めた。


結果は上場、僅か一年でアルテミア大陸でも有数の職人街を作る程にまで成長した。

そこで得た金を使って工房を増やし、職人の数と品質を上げていく。


そんな事をした人間族は、彼らの知る限りユウキただ一人だけだった。


まぁ、当のユウキにしてみれば、ゲーム内の仕様通りに行動しただけだったのだが…その結果が、住民からのやけに高い忠誠心と言うものになるとは思ってもみなかったのだった。


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