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228話


「副長、ご指示を!!」


側に居た騎士の一人の声に、ハッと我に返る。

今は戦いの最中、呆けている暇は無い。


銃士には弾込めを急がせつつ、聖騎士団には盾を構えたまま待機を言い渡す。

見た所相手は一人、ならばコチラの防御を崩そうと、或いは撹乱しようと突っ込んで来た所を包囲すれば良い。


そのまま部隊を三つに分けると、前面に盾を持った部隊で固める。

今度は銃士の準備が終わるまでの時間稼ぎだ。


正面の防御を厚くしつつ、左右の部隊で取り囲む。

相手の動きを見ると、腰に手を当てて、コチラの動きを見ている。


『何故攻めてこない?何か考えているのか?それとも何処かに援軍がいるのか?』

「副長?」


盾を持った兵士の一人が不思議そうな顔を向けてくる。

丸腰の相手に対して、何の指示も出さない事に疑問を持っているらしい。


『ふう、考え過ぎのこの性格をどうにかしないと…』


軽く頭を振ると、右手を前に出す。


「密集隊形、盾持ちは前面をガード!!槍構え!!」


指示を聞いた聖騎士達が、左手に持った盾を重ねて隙間を無くす。

更に上にも掲げて巨体な壁を作る。


盾の後ろで槍を構え、何時でも突ける体勢を作る。

相手が、盾の壁を破ろうとした瞬間、隙間を作って槍衾を作り出す戦法だ。


彼らは今までこの戦法により、北から攻めて来る帝国軍に対し、有利な戦いを続けていた。

この戦法を崩されたのは、騎馬隊による撹乱戦法と、重装備の部隊による強引な攻めだけだ。


だからこそ今回、たった一人相手、それも歩兵に対して絶対的有利と見ていた。

だが、今回は相手が悪かった。


「へぇ、ヤル気かい?」

「?!」


眼の前、百メートル程先に居た女性の言葉に、聖騎士達の背筋がゾッとする。

彼女から、途轍もない圧力を感じ取る。


そんな聖騎士達の事など知った事も無いとでも言うように、その女性は前進して来る。

その歩きは、普通に歩く人だ。

何の警戒もしない、ただ歩いて来るだけ。


謎の圧力に、思わず下がりそうになる自分の体を叱咤し、何とか踏ん張る。

神聖王国の聖騎士ともあろう者が、敵に背を向けるなど出来るものか…と。


全員が歯を食い縛りながら盾を握る。

全身から汗が吹き出る。


気が付けば、女性が眼の前に立っていた。

前列の盾から僅か一メートルの距離、ほんの一呼吸で槍が突き刺さる程の距離だ。


両者の動きが止まる。

女性の方は、歯を剥き出しにしながら笑っている。

聖騎士達は、後方に押し出されるような圧力に頬を引き攣らせている。


ただただ睨み合うその瞬間、たった数秒の出来事だったが、対峙する聖騎士側には、途方も無く長い時間に思えた。


「あ…ああ…あ…あああああー!!」


その僅かな沈黙に耐え切れなかった若い聖騎士が、雄叫びを揚げて槍を突きだす。

指示も何も無い、恐怖心からの行動。


その瞬間、前方の聖騎士達は、釣られるように槍を繰り出していた。


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