224話
東側にエルザを先行させ、ユウキ達は船で南側へ。
その際、不本意ながらも捕虜としてしまった人間達を船内で拘束し、その見張りとしてエルフ達を残す。
ただし、見張りとして残すのは百名のエルフ達で、残りはエルザへの援軍として東側の外壁に降ろす予定だ。
エルフ達を速やかに降ろした後、船はそのまま南下、南側の者達と対峙する事となる。
当初予定とは大分変更されたが、基本的には『浮遊大陸からの退去』を目指している。
今現在の浮遊大陸は、内部の取りまとめが肝心だからだ。
実の所、まだまだ内部でのユウキに対する反抗的、或いは否定的な勢力は存在している。
それぞれが、各地で十人にも満たない少集団になっている為、そこまで脅威となっている訳では無い。
だが、それらが纏まらない様気をつけないと、再度獅子族達のような騒動が起こってしまう可能性もある。
そのような状況が頻発するようであれば、今はコチラに従っている者達でさえも離反する恐れがある。
リリーナとエルザはそう考えているし、その事を聞いたユウキも、隠れた危機を理解している。
その為にも、素早く外敵を排除し、内部の結束強化を………っと、暴走したのがリリーナだ。
本人としても、あそこまで自身が見境なく暴れるとは思ってもみなかった…らしい。
「なんと言いますか…歯止めが効かなかったと言いますか…」
しゅんとしている本人が、どうしても分からない感覚だと言う。
もしかしたら、精神に何かを抱えているのかもしれない。
「働かせ過ぎたか?やっぱり定期的な休暇を与えないと…。それに、指揮ユニットも必要か?エルザの回収も考えると…」
顎に手を当てながら、船に向かって進んで行くユウキ。
やるべき事は多いのだが、さて、何処から手を付けるべきか…悩むのだった。
数時間後には、そんな考えすらも吹き飛ばす事態になるとは、この時のユウキは思いもしなかった。
〜〜〜〜〜
ユウキがそんな事を思っているとも露知らず、エルザは浮遊大陸外周を爆走していた。
踏み込む足元が爆発し、土埃を空へと上げる。
「身体強化ぁ」
既に何度目か分からない強化魔法を唱えると、速度を落とす事無く突き進む。
目標は東の海岸、目的は『勝手に上陸した人間の排除』、そのためなら全力で。
最早、エルザの頭の中から『穏便』と言う単語は抜け落ちていた。
何しろここ数年、ユウキと共に冒険に出る事が無かった。
浮遊大陸の守りとしての日々を過ごしてきた。
それが悪い訳では無い………が、戦闘に特化したエルザにとっては、日々退屈を通り越して苦痛でもあった。




