223話
ゲーム『キング·オブ·キングオンライン』内では、サポート用として雇ったNPCの能力値に『指揮値』というモノがある。
これは中盤以降、領地を持った場合に必要になってくる値だ。
指揮値とは、その名の通り『部隊を指揮する為の値』となっている。
基本数値は『五』であり、最大値は『二十』となる。
この指揮値は、キャラクターの能力値の中でも珍しく、レベルアップで上がらない値になっている。
他の能力値、例えば力や魔力などは、レベルが上がればプラスされる可能性がある。
しかし、指揮値だけは例外だ。
他にも隠し能力値として『運』があるが、それを除くと、人を指揮する能力は、その人の持つ先天的な力となっている。
その為、サポート用のNPCを作った場合、この指揮値の高さによって戦略を考えなければならない所も存在する。
簡単に言うと、指揮値二十のキャラクターは、一万の軍勢を率いる事が出来る。
この率いる事と言うのは、命令を軍勢がしっかり聞いてくれるかと言う事と繋がる。
例えば、率いるだけであれば、指揮値が最低の五や六しか無いNPCであっても可能だ。
その代わり、コチラの指示通り動く事は殆ど無い。
それこそ、勝手に突撃したり撤退したりする有様だ。
更に、敵の攻撃により混乱状態になったりすると、場合によっては同士討ちをしたりする事もある。
その為、ゲーム内ではこの指揮値をかなり重要視していた。
そんな指揮値だが、リリーナは『六』、エルザは『十』となっている。
ユウキとしては、自身の持つイメージと違い、大雑把なエルザが大軍を率いる姿と言うのが、どうにもピンとこなかったりする。
その逆に、リリーナが少数の部隊しか率いれられないのがもどかしい。
とは言うものの、ユウキの浮遊大陸は、シミュレーションモードでの戦闘行為は皆無だった為、そこまで重要視する能力では無かった…のだが、現状ドワーフ達を率いるとなれば、どうしてもこの数値に意識が引っ張られてしまう。
この辺り、ゲーム脳気味になっている事に、ユウキ本人は気付いていない。
ついついゲーム時の能力値を思い出しては、それを元にリリーナ達の配置を考えて行動してしまう。
今現在も、その辺りが頭を過っており、船で全員が行動するべきだったかと自問自答してしまう。
実際には、浮遊大陸東側と南側から上陸している者達に対し、同時に当たらなければならない状況になっている。
その為、東側をエルザに、南側をリリーナとドワーフ達にと分けて配置する事に決めていた。
これは、この北側に到着する前、船の中で情報をまとめた際に考えた事だった。




