表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
220/1240

219話

そんなジーンへと目線が向けられている間に、丁度反対側、女性の右側面へと回り込んだデルが、痺れ薬の塗ってあるナイフを六本投げる。

狙いは武器を持つ右手。


少し傷を付けるだけで、瞬時に相手を無力化出来る。

不幸にも争いになってしまったが、ジーンとしては、何とか穏便に戦闘行為を終わらせたかった。


武器を向けておきながら『穏便』も何も無いのだが………。


完全な死角からの投擲。

感知したとしても、六本もあれば、一つくらいの傷は付けられる…バズだった。


六本中四本は、銀色の小手に当たり軽い音を立てた弾かれる。

残り二本も、衣類部分に当たるも突き刺さる事無く滑り落ちる。


「なんだと?!」


骸骨のような顔を引きつらせ、目を大きく見開いたまま、驚愕の表情を見せるデル。

小手に当たった分は仕方がないとしても、まさか衣類すら貫通しないとは思ってもみなかった。


その驚愕から立ち直る前に、目の前の女性が動く。


「今の攻撃、良い、少し、チクッ、した」


そう言うと、クルリと手首を返してハルバードの石突部分をデルに向ける、そのまま胸の辺りを軽く突く。

ゴリッと言う音と共に、デルの体が後ろへと吹き飛ばされる。


「デル!!」


我に返ったジーンが、飛ばされたデルへと声をかけるが、何の反応も無い。

胸の辺りを見ると、貫通はしていないが、無惨にも革鎧が凹んでいる。


彼らの使っている革鎧は、表面こそ動物の革を貼っているが、内側には薄い鉄板を入れている。

弓矢程度であれば、貫通させる事すら出来ない代物だった。


なのに、その革鎧が完全に凹んでいる。

その事実にジーンは驚いていた。


最初にやられたロガとエイブムも、構えていた武器は粉砕され、着込んでいた革鎧も変形している。

巨大なハルバードをたった二振りしただけでこの有様だ。

力の差があり過ぎる。


仲間の一人アイルを報告へと帰した為全滅では無いが、それでもこの被害はデカい。

手練の斥候が三人も行動不能、なのに相手はかすり傷一つ無いと来た。


『ぐっ』と噛み締めると、足に力を入れる。

仲間を見捨てる気は無かったが、このままでは自分の身きも危険が………


「考え事、ダメです。注意力、散漫なる」


目線を切った覚えは無い。

それなのに、気が付くと女性がコチラにハルバードを向けていた。


『力量が違い過ぎる!!ダメだ、逃げないと』


後方へと飛び去ろうとしたが、それよりも早くハルバードが回転し、石突部分が胸に触れる。


「今度は、手加減できる」


そうポツリと一言発すると、ハルバードを持つ手がぼやける。

背中まで突き抜けるような衝撃を受けると、ジーンの体が宙を舞う。


叫び声すら出る間も無く、地面に叩きつけられ意識を失う。

ジーンの着ていた革鎧には、親指程の小さな穴が空いていた。


「む〜、これだけ手加減してもダメですか」


ジーン達にとって謎の女性であるリリーナは、帝国語を止めて自分達の言葉で呟く。

その台詞は、何処となく不満げであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ