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214話

〜〜〜〜〜

上陸する少し前の話、船の上から見えた『それ』に最初に気付いたのは、メインマストの見張り台に居る船員だった。


「か、壁だ!!壁が見える!!」


彼の叫び声に、下で聞いていた者達が困惑顔をする。

目的地である『陸地が見える』であれば、『やっと到着したか』と安堵しただろう。


それが、壁が見えると言うのだ。

困惑しか無いだろう。

実際、船縁から遠目に見えるのは、巨大な大地だ。


見張り台の高さであれば、更に広い範囲が見えるだろう。

しかし、だからと言って『壁』が見えてくるのはおかしな話だ。


下に居た者達は、『見張りが何やら変な事を言っている』と、全員がそう思っていた。

船長などは、『長旅で疲れたのだろう。到着したら少し休ませるか』と、見張りの心配をしていた程だ。


数時間後、彼らは見張りが言った意味を理解する事となる。

自分達が最初に上陸するハズの場所に、巨大な壁が現れたのだから。


沖合に錨を下ろすと、上陸準備を始める。

小型の舟を下ろして、先発隊が次々に乗船する。


全員の顔色は悪い。

それはそうだろう。

彼らは『無人の島に、誰よりも早く上陸して、橋頭堡を作らなければならなかった』のだから。


それが、巨大な壁が既に出来ているとなれば、『自分達よりも先に上陸した者達が居る』と言う事になる。


今回の上陸の指揮を取る『ザクリア帝国元第五騎士団長アガーフォン』は、渋い顔をしながらも、眼の前に広がる大地を眺めている。


「先を越されましたな若君」

「………」


側に居る副長ボリスの言葉に、何の反応も返さない、いや返せない。

それよりも今は、上陸後の行動を考えるべきだと思考する。


彼、アガーフォンの目的は、あくまでも拠点作りだ。

後に続くであろう帝国軍本隊の為にも、橋頭堡となる場所は必要だ。


そう結論付けると、連れて来た兵達の中でも索敵に優れた者達を数人選び、先発隊として送り出す。

彼らの仕事は、この船に乗る兵士達が集結する場所の選定と、周囲の探索だ。


一応、眼の前にある『謎の壁』の調査も言い付けた。

船上から見ても、かなり大きい。


直線距離にすれば、七〜八キロは離れているだろう。

それなのに、壁がハッキリと見えている。


つまりあの壁は、我が国にある城壁よりも高さがあると言う事だ。


「ボリス、この島が現れてそろそろ三十日程度になるか?」

「ふむ、恐らくそうですね」


ボリスは、顎を撫でながらアガーフォンの言葉に答える。

自分の仕える主は、一体何を考え、何を聞きたがっているのか。

ボリスは思考を加速する。

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