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213話


〜〜〜〜〜

同時刻、浮遊大陸北側の城壁上に一人の人物が立っていた。

白を基調としたドレスに銀色のズレストアーマー、右手には巨大なハルバードを持つ。


石突部分を城壁通路に当てつつ立つ姿は、歴戦の戦士然とした姿だ。

背中の白い羽が、風に煽られユラリと動く。


「良い風ね」


それ程強く無い風に、銀色の髪の毛がフワリと靡く。

茶色い眼差しが睨み付ける先にあるのは、大型船から降りて浮遊大陸へと上陸しようとしている『人間族』だった。


彼ら外側の世界から来た『招かざる者達』は、沖合に船を停泊させると、小型の舟を出して次々に上陸してくる。

最初に上陸した者達は、砂浜から少し上がった所で動きを止めている。


高さ四十人メートルはある城壁上から見る彼らの動きは、困惑していると分かる動きだ。

どれもこれも、この城壁を見て呆然としているような雰囲気だ。

さすがに距離があり過ぎる為、表情までは分からないが。


そんな彼らを見下ろしているのは、完全武装したリリーナだ。

彼女は、浮遊大陸周辺の海域で、護りを任していた海人族達からの連絡を受けて、直ぐ様この場所へと飛んできた。


その文字の通り、背中の羽を使って一直線に飛んできたのだ。

彼女ら有翼族にしてみれば、空を飛ぶ事など、アスリートが軽く走る程度のものだ。


もっとも、普通の人達にしてみれば全力疾走の速さだが、それでもユウキ達が乗るガレオン船よりは速く到着出来る。

海人族達から『船が近付いている』との詳しい連絡を受けると、エルザに後の事を任せて城を飛び出して来た。


勿論、目的は『勝手に浮遊大陸へと侵入しようとしている者達への対処』のためだ。

完全武装で来た理由は、ユウキの指示だからだ。


「先行するのは構わないが、行くなら完全な状態で行く事」


あの『ぼや〜っ』とした最愛の主が、本気の目で伝えて来たのだ、断る必要が無い。

そうして準備を済ませて来てみると、目標の者達は既に上陸していたと言う訳だ。


「さて、どうしたものでしょうか」


ユウキからは、『無理をするな』と言われていたのだが、このまま上陸を許すのも腹立たしいと感じてしまう。

顎に手を当てて考えていると、眼下に動くモノが見える。

数は五つ。


距離としては、城壁から二〜三百メートルと言う所だろう。

皮の鎧を着込んでいる事から、恐らくは最初に上陸した者達、それも斥候だろう。


外側の海辺から緩やかな斜面になっているとはいえ、何の遮蔽物も無い地面を進んで来れば、どんな者達でも見つけられると言うものだ。

城壁の上から、背中を屈めて中腰姿勢で近付く人間族の者達に、冷ややかな目線を送ると、体を城壁の外へと進める。

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