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210話


〜〜〜〜〜


「くっ、殺せ」

「何言ってんだよ相棒?」


生き恥を晒してしまった。

まさか、一度探した衣装部屋に戻っては来ないだろうと油断したのが敗因だった。


衣装部屋近くの倉庫に隠れて様子見をしつつ脱出の機会を窺う。

今回の目標は衣装部屋。

ここには、城で働く執事やメイド、コックに庭師など、色々な人達の為の仕事着が用意されている。


働く人達は、それぞれ種族が違うせいか、体型などの差が大きくある。

その為、サイズも大きい物から小さい物まで色とりどりだ。


昨日、逃げ回ってる内に偶然発見した部屋だったが、ここで閃いた。


『ここの服着て変装すれば良いんじゃね?』


メイド達が、衣装部屋をチラリと覗き見て次の部屋へと移動する。

その後ろ姿を確認し、隣の部屋へと入った瞬間、ダッシュで衣装部屋へと侵入する。


事前に調べていたが、この衣装部屋にある服類は、新品か洗濯済み品だ。

誰かの使用済み品では無い。


はっはっは〜勝った〜第三部完!!って、バカやってる間じゃない。

部屋の中をグルリと見回し、小柄な人用と思われる衣装ケースに近付く。


残念な事に、今の俺の体に合う服が無い。

いや、無い訳ではないが、男物が無い。


くっ、執事服とかチョット着てみたかったのに…っと思いながら、自分の体型に合った服を探す。

見つかったのが『メイド服』だったのはアレだが、今ならなんとかなる…はず?


カツラのような物まであるし…たしかコレ、ウィッグとか言うんだっけ?

まぁ…これを付ければ、更に違和感は無くなる。


そう思ってた時期が俺にもありました。


この時点で、『一度調べた衣装部屋に戻って来ないだろうし、来るとしてもそれなりに時間が経ってからだろう』と油断していた。

だから、部屋の外に対する警戒心が途切れてたんだと思う。


メイド服を着て、カツラを頭に付けようとした瞬間、出入り口の扉が開いて人が入ってくる。

いやはや、人って言うのは、咄嗟の時に体が硬直するモノなんだねぇ〜、驚いた、うん。


………っと、軽く言ってるけど、心の中では大混乱。

入って来たのは三人の女性。

一人は見た事がある。


確か、リリーナの側で仕事の手伝いをしているエルフさんだ。

金髪碧眼でスラッとした美人さん。


珍しい事に、その目を大きく開いて驚いている。

滅多に表情を変えない人だったけど、そんな顔も出来るんだ〜っと、現実逃避。


そのエルフさんの後ろには、ちょっと幼い感じのエルフの少女と、不思議そうに首を傾げている獣人族の少女がいた。

俺の顔見てもリアクションが薄いから、多分新人のメイドさん達って所かな?


んで、新しい娘達の衣装を取りに来た…と。

はっはっは〜ヤダ、俺って運悪過ぎ?


え、その後どうしたって?

そりゃ〜アナタ、金髪碧眼美人エルフさんが大声を出したせいで、俺、御用になった訳ですよ。


メイド服を着た状態で。


……………うん………コロ…シテ………コロ…シテ…。

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