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208話


そんな平和な時も、徐々に終わりへと向かっていた。

争いの元というのは、大概外の世界から持ち込まれる。



その日、リリーナの元へ三つの報告が入った。

その三つ共、彼女が一番危惧していた事案についてだ。


北、東、南、それぞれの方角から、ガレオン級の船舶が近付いて来ていると言う報告だ。

『同時進行』と言う言葉が脳裏を通り過ぎるが、現在彼女の入手した情報では、それはあり得ないと判別し頭を振る。


リリーナの知る限り、接近している三つの船の大元とも言える国々は、それぞれが敵対、或いは中立の立場だったハズだ。

更に言えば、同時進行するメリットが全く無い。


接近する船に対し、精霊達を送り出してみたが、そこから見えて来たのは『他の国々を出し抜く』と言う思惑だけだ。

特に北と東の二つは、何らかの情報を得ているのか、互いを意識しながら進んでいると言う。

そのせいか、進行速度が早く、こちら側からの攻撃にも耐えながらも進行を続けている。


この進行を止める為にも、船員への直接攻撃をと海人族側からの進言があった。

現状、相手側の戦力が不明の為、直接攻撃では無く、イヤガラセに近いやり方をさせているのだが…それも、限界に近いと見るべきだろう。


「攻撃を仕掛けるとするなら、最大戦力を当てるべきだろうが…」


机の上の書類を見ながらも、どうするべきか考え込む。

現在の浮遊大陸内の総戦力は、ドワーフ達が二百人、エルフ達も二百人となっている。


彼らは、今までやらせていた仕事をこちらの都合で取り上げる形になってしまった為、騎士待遇での雇入れとした者達になる。

最低限の戦闘力しか無い元職人達が、未知の人間族に対してどれだけ通用するかが分からない。


追加として、獣人族からも腕に自信のある者達を中心に雇っているが、まだ十分な訓練を積んでいない。


「いや、寧ろドワーフとエルフが、戦力として数えられるようになっただけでも良しとするべきか?」


高レベルとも言えるリリーナにしてみれば、雇入れたドワーフやエルフなど、たかが知れている能力にしか見えない。

精々が『一般人より強い程度』の者達になる。


対する人間族達は、それぞれの大型船に、百から二百人の戦士が乗っているらしいとの報告だ。


「数の上ではコチラが上、しかし、戦力を分散して凌げるかは不明…」


海人族にひと当てさせて戦闘力を見る手もあるのだが、もしもの事を考えれば不安が残る。

何より


「そんな戦法は、マスターが嫌がりますよね」


っと、ため息を一つ吐く。


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