207話
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浮遊大陸が、この異世界に来てしまってから、まもなく一月経とうとしていた。
この一月で、城周辺の住宅の修理はほぼ終わった。
ユウキが何気なく言った『なんちゃってローマン・コンクリート』開発によって、土台から壁まで頑丈な作りになって復興していた。
リリーナが、『この技術を大陸全体に広めて、素晴らしき都市設計を行いましょう』と言い出し、少々困った事になっている。
いや、人々の生活が良くなるってんなら良いケド…でも、無理の無い範囲でなら良いよ?っと、微妙な返答をしておいた。
うん、れっつ日本人。
取りあえず、各地にある大都市、行政区の中心として機能している大砦、各物資集積所としての港街を中心に、このなんちゃってコンクリートを使用していく事になった。
まぁ、各地の建物も結構な被害を受けていた為、それらの修復に使う事前提だそうだ。
ちなみに、今回の修復に掛かる費用は、全て城の方で出している。
とは言っても、素材の購入と分配、作業者に対しての賃金と食料提供、そのくらいの話だが。
「そうですマスター、これを機に『ろーまんこんくりーと』なる名を『ユーキンコンクリート』に変更しては如何かと。その方が、市民にも分かりやすいかと」
「うん、却下!!」
胸の前で両手を合わせて何を言い出すかと思ったら…何だよユーキンコンクリートって?
ユー○ャンの通信講座っぽくなってやがるじゃねぇかよ?!
後、ユーキンコンクリートだと、俺が埋められてそうな感じになるよ、止めて差し上げろコンチクショー!!
結局、名称はただの『コンクリート』になった。
リリーナが頑なに『ユーキン』なる名を入れようとしていたが、そこは断固拒否!!
なんて言うか、現実世界…俺の居た世界線になるか、その世界の技術を自分の物にする気は無い。
たとえそれが『なんちゃってな代物』だったとしても…だ。
ちなみに、現実世界では、このローマン・コンクリートの製法は失われているとされていたハズだ。
ただ、似たような物の作り方を覚えていたので、そっちの方を真似てみた結果だ。
まあ、火山灰と山地で取れる粘土を混ぜ込み、魔法で強化する…らしい。
いや、俺が言ったのは、火山灰と土と水を混ぜる事で、硬くなると言っただけなんだが…魔法って万能過ぎん?
この説明を聞いたドワーフ達が、それぞれ色々な配合を試した結果、コンクリートモドキが完成した訳だ。
「ふむ…だったらコレ、ドワーフコンクリートと名付け」
「ダメです」
「いやでもドワーフ達が創っ」
「ダメです」
「………」
「ダメです」
「はい」
凄く強い口調でリリーナに却下されてしまった。
すまぬドワーフの職人達…すまぬ…。




