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202話

リリーナの場合、この世界の人間達とユウキが接触する事で、何かしら友好的な関係構築に恐れを持っていた。

本人は、『未開の人間達に懐柔されては一大事』などと、もっともらしい事を言うのだが、実際には自分以外の者達、特に『ユウキと同じ人間』が、仲良くなっている姿を見たくないと言う嫉妬心から来るモノだと自覚していない。


その辺りは、それなりの付き合いであるエルザが分かっており、敢えて何も言わず、ニヤニヤとした笑みを向ける。

本当なら、からかい事の一つや二つは仕掛ける所だが、そこは敢えて自重する。


大人な雰囲気を醸し出すリリーナが、何やら青臭い小娘のような行動をする姿に、どうにも笑みが止まらない。

この笑みのせいで、リリーナとの言い合いが発生するのだが、分かっていても止められない。


『はん、お互い青いねぇ〜』


鼻で笑いながらも心の中で呟く台詞は、外に出る事無く消えて行く。

エルザ自身、ユウキの事が好きではあるが、彼女の場合、種族特有の精神による好意と言える。


有角族は、強者に対して好意を寄せる。

エルザからすれば、力や体力などは有角族に及ばないユウキであっても、その膨大な魔力量は正に強者たる証だ。


彼女の中にある『強者への好意』が、ユウキに対する愛情に繋がる。

とは言うものの有角族の愛情は、『強者との間で子を成す事』でしかなく、他種族の愛情とは一線を画す。


『子孫をより強くする為』と言うのが、エルザ達有角族の本能なのだろう。

その性質のせいか、有角族の相方には、他種族の者達が以外と多かったりする。


実際エルザの母は、エルフの魔法使いだった。

そのお陰で、他の有角族の者達に比べて、魔力量も使える魔法の数も多い…あくまでも有角族としてはだが。


「うん、当分の間は、外の者達との交渉はしない方針で行こう」

「マスター、宜しいのですか?」


色々と考えたとでも言いたげに、ユウキが胸を張って答える。

本心は嬉しいのだろうリリーナが、背中の羽をパタパタと動かしつつ聞き返す。


相変わらず、素直に反応する羽だ…と、エルザは見るが、今はそんな事を揶揄している所では無い。


「一応方針としては聞くけどよ相棒、理由は何だい?」


元々、この世界の者達との接触は最小限にしようとの取り決めを転移して来た当初にしていたのだが、それでもいざその時となれば、それで良いのかい?との疑問も出て来る。


幾らリリーナやエルザ達が、ユウキに対して心から従っているとしても、ある一定の所では線引きをしなければならない。

例えば、『有角族全て、死ぬまで戦え』などと言われても、半数の者達は拒否するだろう。


この事をユウキが知れば、『何で残り半数は従う気満々なんだよ?!』と、頭を抱える事になるだろうが。

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