200話
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部屋の隅に設置してある大きな時計な針が、十時を過ぎようとしていた。
「ふう、お茶が美味いな」
「言ってる事がジジくさいぞ相棒」
仕事を一時中断すると、窓際に設置してあるソファーで寛ぐ。
何処からともなく現れたエルフのメイドさんがお茶を入れてくれたので、それをノンビリと楽しみながら飲む。
『う〜ん、テラスとか小洒落た場所じゃなくて、縁側で飲みたいな〜』
などと、本当に年寄りのような事を思ってしまう。
まあ、祖父母の家に行った時など、縁側でゴロゴロ転がるのが好きなユウキだ。
「あの〜マスター、そろそろ許していただけませんかぁ?その…足が痺れてきてしまいまして」
か細い声が部屋の真ん中から聞こえてくる。
チラリとそっちに目を向けると、正座をさせられているリリーナが居た。
微妙に体中がプルプルと震えているのだが、正座をさせられてからまだ五分もたっていない。
彼女の種族である有翼族は、基本的に高い場所に居る事が多い。
更に言うと、座ったりする場合、背中の羽が邪魔になる為、背の高い椅子、バーなどにあるカウンターチェアのように、背もたれ部分が小さく座る部分が高い椅子を使う事が多い。
普通の椅子や地面に座る事もあるのだが、普段の生活では専用の物使っていたりする。
そんな生活環境のせいか、正座が一番苦手だったりする。
出来ない訳では無い。
長時間維持出来ないのだ。
「そう考えると、最初に膝枕してくれてたのは結構我慢してたんだろうな〜」
「あん?何か言ったかい?」
ポツリと言った言葉に反応したエルザだったが、内容までは聞こえていなかったようだ。
なので、「なんでもない」と手を振って誤魔化しておく。
下手な事を言えば、どうなる事やら…。
「うぐ…あう…うう…足が…あぁぁ…」
それよりも、小声で喘ぐリリーナの姿がちょっと背徳的なので、正座を終わらせとこう…うん。
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「はぁ…酷い目に合いましたわ」
「オマエの自業自得だろ?」
まだ足が痺れているのか、横座りをしながら足を伸ばしているリリーナに、ジトッとした目線を向けるエルザ。
これに関してはリリーナが悪い…うん。
「それにしても、この果物を食べると言語が理解出来るようになるんだよね?」
綺麗に切られたリンゴを食べつつ、頬を赤らめているリリーナに聞く。
………ちょっと色っぽく見えるから、目線を反らしておくけどね。
息を整えたリリーナが「まだ不完全ですが」と、何やら申し訳無さそうな表情をコッチに向けてくる。
リリーナによると、今の情報量で簡単な会話程度は出来るようになったらしい。
もう一月程度情報を集めれば、ほぼ完璧になるそうだ。
「ご安心下さい。当分の間、情報集めは続行しますので」
そう言うリリーナだったが、取りあえず『無茶をしない程度で』とだけ言っておいた。




