199話
そんな事をこの二週間続けた結果、かなりの情報と言語を集められたとの事。
壊れた街に獅子の獣人達の反乱行動などあった中、外への情報収集までやってくれていたとは思ってもみなかったユウキ。
「えっと…ごめんよリリーナ。大変だったよね?」
ついそう言ってしまったが、彼女はキョトンとした顔を向けている。
その姿を見て、自身の言葉が何やら違った事をユウキは悟り、右手の人差し指で頬を掻く。
「あれ?俺って変な事言ったかな?」
「マスター」
「あぁぁぁぁー!?」
机を越えてダイブして来たリリーナに押し潰され、椅子ごと背後に倒れ込む。
「おい止め、止めろぉー!!」
必死に離れようと手を伸ばすが、何やら柔らかいモノに邪魔されて…って、ちょっと待てぇー!!この柔らかいモノって胸?!
「離れろこのおバカー!!」
「マスターマスターマスタぁー」
ヤバイ所に触れていたと気付いたユウキは、直に手を離してバンザイ招状態になる。
あのまま手を伸ばせばどうなるか…社会的に死ぬ、うん。
『いや、今いる場所は俺の知る社会じゃ無いけど…って、そんな事言ってる場合じゃない!!』
唯一出せる言葉でリリーナを剥がそうと試みるが、当の本人が聞いていない為、何もならずにいる。
「あぁーもぉーはーなーれーろーよぉー!!」
「マスターマスターまぶふぅ?!」
「何やってんだいアンタは!!」
両手を上げたまま文句を言っているユウキの胸にしがみついていたリリーナだったが、その頭に凄まじい勢いで拳骨が振り下ろされる。
片手に大量の書類を持ったエルザだ。
彼女は、別の部屋で住民から寄せられた書類を選別する作業をしていた所だった。
手伝いに雇ったエルフ達が疲れたと言い出したので、仕方がなく休息とし、そのついでに選別済みの書類を持って来た所だったのだが、まさか、ユウキを抱きしめているとは思いもしなかった。
その為、ついつい本気で拳を振り下ろしてしまったのだが………エルザ曰く、決して羨ましく思ったからでは無い。
『自分だけが別の部屋で、苦手な書類仕事をさせられたから………よし、コッチの方が良い』
なとと、意味不明な事を考えていた。
ちなみに、振り下ろした拳の勢いは、本来であれば床石程度は粉々に出来る程の威力だったのだが、そこは『北斗の七将』の一人。
大きなタンコブ程度の被害で済ませていたのだった。
「ちょっと、痛いじゃないですか」
「うるせえ!!お前だけズルい…じゃなくて。遊びやがって!!罰だ罰!!」
などと、ユウキの眼の前で言い合いをしているが、当の本人にしてみれば『あの威力だと頭部が破裂するだろうが』と、冷や汗をかくのだった。




