197話
ユウキのサインの入った書類をまとめながら
「予算の都合もありますから」
「ぐぬぬ…」
そうリリーナに言われてしまえば、最早言い返す事も出来ない。
浮遊大陸のトップと呼ばれていても、政治の素人ではしょうがない。
「知っているからと言って、浅はかな考えでの行動はよろしくない…かぁ〜」
『はぁ〜』っと一つため息を付くと、机の上に置いてあったお茶を飲む。
既に冷えていたが、渋みが美味しいとジジくさい事を思ってしまう。
微妙に味覚が子供に帰ってしまっているが、それでもお茶の美味しさが分かってホッとしてしまう自分が居た。
このよく分からない世界に来てから、かれこれ二週間は過ぎようとしていた。
その間に、自分の支配下に入った精霊達にお願いして、浮遊大陸外の各地へと調査に行ってもらっている。
これは、この世界の人々の情報集めと言語収集の為だ。
この情報集めに、精霊達が大活躍してくれていた。
最初にリリーナから『精霊を使った情報収集』を言われた時は、某格闘家の『お前は何を言っているんだ?』状態になっていたのだが、よくよく聞いてみると、下位の精霊達には、『見たり聞いたり』した事を記録する事が出来るらしい。
とは言ってもそこは自由な精霊、それも意思疎通がし難い下位の精霊。
コチラの知りたい事を把握して集める事は出来ない。
中位の精霊になると、ある程度の意思疎通が出来るようになるのだが、下位では無理。
そこでリリーナは考えた。
『丁度良い事に、マスターが沢山の精霊を味方に付けたのだがら、それら全員使って情報を集めれば良い』
と。
数の暴力で集めて、それを集計してまとめ上げるつもりらしい。
本人がそう言うので、試しにやってみたのだが…これが以外と難しかった。
まず言語、これが我々と全部違った。
精霊達の記録したモノを眼の前で映し出してもらったのだが、何を言っているのか分からなかった。
ただ、そこはリリーナ。
複数のサンプルから、言語の統一性を見出し、大まかな翻訳が出来るようになっていた。
いや、何で三日で出来てるんですかね?
その問に、リリーナ本人は『存外簡単でしたよ?』と、アッサリ言うのだった。
うん、流石知力高めのステータス。
こんな所に影響を及ぼしていたとは思いもしなかった。
ゲーム内であったステータスの概念は無くなったようだが、その数値に値する知識や経験までもが無くなった訳では無いらしい。
つまりは、ゲーム内のデータを元に個人能力を知っているのは、現在の所、ユウキだけと言う事になる。
まぁ、彼女達の前に数値を表示させる方法が無いので、『君のレベルは○○で力は○○だ』と言っても無意味なのだが、何か仕事をさせる際の指針としては使える…と思う。




