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193話

血飛沫が舞い散る中、森のあちこちから、まるで津波のようにゴブリンの群れが現れる。

その殆が、周囲に充満した血の臭いに誘われた結果だ。


どのゴブリンも、目を血走らせながら、及び腰になった獣人達に襲いかかる。

ある者は手を噛まれ、ある者は足を引っ張られて転倒している。


その後の様子は、まさに蹂躙と呼ぶべき状況だ。


引きずり倒された者達に、無数のゴブリンが殺到する。

それを助けようとした者も、横から飛びかかって来たゴブリンに倒される。


あり得ない、こんな事あり得ない!!

呆然としていたグレゴル。

当然だろう。

通常であれば、ゴブリン程度に獣人族が負けるハズは無かった。

通常であれば…だが。




〜〜〜〜〜

この森は『魔境の森』と呼ばれている。

森の中心部分には、古びた砦が一つポツンと建っている。


この砦だが、実は迷宮になっている。

迷宮とは何かと言うと、この世界では魔素の固まりによって出来る不思議なモノだ。


どんな場所であっても発生する怪現象だ。

この浮遊大陸でも五ケ所程、迷宮化した場所がある。


この魔境の森もその一つだ。

浮遊大陸の中心部から東に行った所、現代の日本地図で言えば山梨県北部の山の中になる。

すり鉢状になった土地の真ん中に砦が建っており、周囲を濃い魔素が包み込んでいる。


範囲としては十キロ程度の広さしか無い場所に、数百ものゴブリンの集団が住み着いている。

彼らは、この魔素の濃い地で、少ない食料を巡って日々殺し合いをしている。


その為、並みのゴブリンよりも強靭な個体が多い。

生まれ落ちた時から、親子兄弟で殺し合う殺伐とした地。


そんな強靭なゴブリン達だが、この土地から外に出て来る事は無い。

理由として『濃い魔素』が関係してくる。


実はこの地で生まれたゴブリン達は、この濃い魔素によって強くなっている。

勿論、日々の殺し合いも関係しているが、それ以上なのが魔素だ。


魔素を体内に取り込み、活性化させる。

この地のゴブリン達は、無意識の内に『身体強化』の魔法を使っている状態になっている。


身体強化を常時発動し、その消費魔力を周囲の魔素で補っている為、魔素の薄い外側へは移動しない。

彼らゴブリンにしてみれば、この地の外側は、人族にとっての空気が薄い空間になってしまうからだ。


故に彼らゴブリン達は、この狭い世界で、生存競争を行っている。

そんな修羅の世界に、自分達は強いと勘違いしている獣人達が入り込めばどうなるか…言うまでも無い。


彼らは餌だ。

このゴブリン達にとって、外から入って来た『愚かで弱い』餌にしかならない。


久々に訪れた幸運に、互いに食い合うゴブリン達が協力しあい、一斉に襲いかかる。

グレゴル達は餌だ、愚かで弱い食料だ。

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