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188話


「さて、コッチは片付いたが…問題はお前さん達だねぇ」


そう言うと、グレゴル達とは分けていた獣人の集まりに歩いて行く。

獅子の獣人達が、射殺すような視線と罵声を飛ばす先に居たのは、サイの顔をした獣人青年ベランと、似たような顔の面々。


サイだけでは無く、カバや鹿、馬も居る。

コッチの集団は、全体的に草食動物系が多いようだ。

鳥顔も居るが、顔の形から地上の鳥であるダチョウの獣人のようだ。


そんな彼らは、全員武装解除に応じた後、不安そうな顔で一固まりになっている。

まぁ、とんな理由があっても、武器を向けた相手なのだから仕方がない。


彼らの前に、足を震えさせながら立つベランだったが、顔面は蒼白だ。

彼が命じられた仕事から考えると、これまた仕方がないだろうな…っとエルザは思う。


サイの獣人ベランは、城下町に侵入後、情報集めをする傍ら、彼ら獅子の獣人が攻め込んだ際の撹乱行動も行う予定だった。

ベランだけでは無く、他にも二人侵入していた。

そちらも拘束済みだが、もし実行されていれば、それなりの被害が出ていただろう。


彼らは、街中の至る所で放火を行い、都市内を混乱に陥れるつもりだったらしい。

何処に火を点けるか決めている最中に、獣人の子供達が拘束されている場面に遭遇。

ついつい任務を忘れて、ベランだけが飛び出してしまったと言うのが事の顛末だ。


彼を拘束した際、手持ちの検査で、革袋に入った油を発見した事で、詳しく調べる事になった。

元々ベランは、放火を躊躇っていた為、少し脅しただけでアッサリと白状したのだった。


『その代わり、子供達は無関係なので許してほしい』


と、鬱陶しい程懇願してきた為、コチラの方が辟易とさせられたものだ。

まぁ、彼らに関しては『未遂』の為、どうこうするつもりは無い…が、獅子の一族は別だ。

ここに拘束されている者達以外にも、まだまだ反抗的な態度を取っている者達も見受けられる。


さすがに彼ら全員を無罪放免と言う訳にはいかない。

リリーナなんて、ユウキさえこの場に居なければ、さっさと彼ら全員の首を落としていた所だろう。

あの顔を見れば分かる。


そう思考している所で、問題のベランは眼の前で土下座を敢行。

いや…やるだろうなとは思っていたが、予想通り過ぎてて…。


「どうか、後ろの者達には寛大なご処置をお願いいたします。この者達は脅されていただけなのです。悪さをしていた者はいません。ですから何卒」

「はぁ〜、またかよぉ〜」


必死に土下座するベランの姿と、それを見てコッチを凝視する他の獣人達。

もう完全に悪者扱いじゃねぇかよ。


ついついそう愚痴ってしまうエルザだった。

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