186話
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「もががぁ(親父ぃ)ー!!」
口に猿轡を噛まされた獅子の子供が、涙を流しながら叫んでいた。
彼の眼の前では、最強だったハズの父親が、手足から血を流して転がされていたからだ。
父だけでは無い。
兄のように慕っていた者達、全員が同じようにされていた。
あり得ない!!こんな事ある訳がない!!俺達獅子の一族は最強だ!!最強なんだ!!
どれだけ叫ぼうとも、獅子の子供の見える世界は変わらなかった。
後方に居た奴隷共は一歩も動かず、ドワーフやエルフの言いなりのまま武装解除をしている。
『ふざけるな!!』『突撃しろ!!親父達を助けろ!!』そう叫ぶも、猿轡のせいで一切通じない。
『卑怯な奴らめ!!』
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ふむふむ、あの獅子の少年がさっき叫んでた『もががー』って言葉は、多分『おやじー』って所かな?
アレが『おとうさん』だったら『もがもがが』って五文字だし、『とうさん』だったら四文字。
一番無さそうな『パパ』だったら二文字って事で、三文字だったから『親父』と叫んでたって事で。
その後も、何やらモゴモゴ言ってるけど、何で彼は猿轡されてんの?
え、ウルサイから?おっけ〜把握。
などと考えている俺、ユウキだけど、現在は、あの巨大な鎧の肩の上に座ってる。
うん、あの有名アニメを見た時から一度はやってみたかったんだ。
見た目にも巨大な金属鎧の肩に座る。
今の小さな体なら余裕余裕。
そんな俺の傍らで、何やらハラハラしているのはリリーナ。
事ある事に、防御魔法や探知魔法を掛けまくっている。
不法に住み着いていた獣人達の武装解除は、今の所順調に進んでいるが、だからといって安全とは限らない…らしい?
まぁ、彼女の言い分も分かるが、だからと言って鎧の中に押し込めておくのはどうかと思うんだけど?
そう言った途端、何だか目が泳ぐリリーナ。
ちなみに、どうやって鎧の中から出られたかと言うと、この鎧、所々を内側から金具で留めてあるようだ。
まぁ、外からも留めてあるので、一〜二箇所外した所で無意味なのだが、唯一、兜が首元二箇所で固定されていた。
その二箇所を外すとあ〜ら不思議、兜部分がコロリと外れ落ちた訳で。
後は、ポッカリと空いた首から、無理やり抜け出したと…。
うん、ホントに子供の体で良かったよ。
これ、元の大人状態だったら絶対無理だった。
…いや、その場合、普通によろい姿で動けば良いのかな?
でもデカいし重いし…ってか、こんな重い鎧を軽々と持ち上げていたリリーナって…いや、今は何も言うまい、うん。
取りあえず、エルザ達が周囲をまとめてくれるまで待機なのですよ。
傍らで『もがーもがー』って叫ぶ獣人の子供が居なければ良かったんだけどね。




