182話
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睨み合う両者だが、雰囲気だけは違う。
方や『飛び掛かるタイミングを見計らう』獣人族に対し、『訳の分からない殺意に困惑する』ドワーフ達とエルフ達。
ドワーフ達もエルフ達も、城の裏手、大きな川を挟んだ場所に、勝手に住み着いていた獣人族の事は知っていた。
知ってはいても、関わる事が無かった為、コレと言って悪意も何も無い。
強いていうならば『無関心』だろう。
『好きの反対は、嫌いでは無く無関心…だったっけ?いやアレは確か、愛する事の反対が無関心って話が元だったような』
○○が嫌いなどと言う事は、その○○が無ければ好きと捉えられるから…って、そんな感じの話を聞いて『なるほど』と納得した事がある…って、そんな事考えながら現実逃避している場合じゃない!!
どう見ても、一触即発しゃないかよ!!どうしてこうなった?!
焦るユウキだったが、大きな鎧の中では、何とか外を覗き見る程度しか出来ていない。
鎧の内部では、腰部分の僅かな出っ張りに足を掛け、中腰姿勢で兜の目の部分に当たるバイザーから外の様子を探る。
どう見てもヤル気満々の獣人達。
第三者目線で見てしまうが、さすがに今の状況は悪い。
もしも彼ら、獣人達に先手を取られでもしたら、死人…は、エルザが先頭に居るから出ないと思うが、怪我人は続出するだろう。
そういった被害を最小限にする為にも、ココは誰かが動かないと。
…っと言う訳で
「何をしているエルザ、リリーナ、俺達の目的を思い出せ!!彼らと戦いに来た訳じゃないぞ」
っと、鎧の中から叫ぶ、我ながら情けない格好だが…声が鎧の中でグワングワンと反響音してるし…。
いやコレ、五月蝿いわ!!自分が出した声だけど…でも、コレくらい大きな声じゃないとエルザに届かないからしょうがない。
突然の声に、思わず動きが止まる獣人達。
まぁそうなるよな〜、いきなり甲高い声が聞こえて来たら戸惑うよな〜うん。
「な、何だ今の声は!!子供…か?」
困惑顔の獅子の獣人、確かグレゴリって言ったっけ?
なんでそんなに狼狽えてるんだよ?
ちょっと声が聞こえただけで…いや、姿が見えない状態ならしょうがない…のかな?
「ですがマスター」
「リリーナは言い合いをしない!!何が気に入らないのかは分からないケド、冷静に」
「……………………はい」
おい、やけに長い沈黙の後の『はい』だったな?
そんなに嫌なの?
ホント、君に何があったんだよ?
「それとエルザ、交渉は君に任せるしかなさそうだから頑張れ」
「おい相棒?!」
「文句は、全てが終わった後リリーナに!!」
「ぐっ…」
エルザの方は、交渉事が嫌そう。
まぁ、気持ちは分かるけど、今のりリーナよりはマシだと思うから頑張れ。




