177話
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ユウキ達の目の前には、武装した獣人族がいる。
数は十四〜五人と言う所だろうか、全員が革鎧と鉄の剣を装備している。
装備の質も見た目もバラバラな所を見ると、色々な所からかき集めたと言う感じだ。
それでも、身長が二メートルを超える大柄な獣人族が武装している姿は、それなりに迫力がある。
まぁ、コチラの『如何にも高性能』な武装のドワーフ達やエルフ達に比べれば、いまイチな所だが。
城の北北西にある北側へ向かう橋を渡った後、ユウキ達一行は東側へと進んでいた。
北側は温泉街、西側は獣人族の町となっており、それぞれの道はしっかりと管理された作りになっている。
管理と言っても、年に一〜二回程度、街道脇の草を刈ったり、道に出来た凹凸を直したりするぐらいだ。
勿論、実行するに当たり、しっかりとした賃金を出して人手を集めている。
無償のタダ働ききなんて事はやっていない。
だが、東側の道は別だ。
コチラ側に住んでいるのは、同じ獣人族でも、ユウキに従わない者達だ。
指示にも従わず税も収めない者達の生活圏まで面倒を見る必要は無い。
その為、彼らの使う道は、獣道に毛が生えた程度の代物になっている。
この道を使うのが、そもそも彼らだけなのだからしょうがない。
そんな整備されていない道を三十分程度進んだ所、目の前には、高さ三メートル程度の粗末な木製の壁が見えてきた。
この壁の向こう側が、彼ら獅子の一族の住む土地らしい。
リリーナ自身は何度か行った事があるらしく、鋭い目で壁を睨み付けている。
相当嫌な事があったのかな?…っと、ユウキが下から見上げていると、木の壁の向こうに見える見張り台から怒鳴り声が聞こえてくる。
「おい、止まれ!!」「貴様ら何者だ?!」と、色々と聞こえて来るが、その声色は少々震えているようだ。
まぁ、完全武装の一団が近付いてきたら、誰でも不安になるよな〜っと思っていたその時だ。
「お、お前ら!!早く俺様を助けろ!!」
ドワーフ達の乗っていた馬車から、どうやって猿轡を外したのか分からないが、例の獅子の獣人の子供が身を乗り出して、必死に壁向こうへと叫んでいた。
それに気付いたドワーフが、馬車から落ちないよう首根っこを掴まえたのだが、見張り台に居た者達には、その姿が別のモノに見えたようだ。
「その声は若様!!」
「おい、若様がドワーフ共に捕まっているぞ!!」
見張り台の獣人達が、声を張り上げると、壁の向こう側が騒がしくなっていく。
聞こえて来る声は、何故か『エルフ共が攻めてきた!!』だの『ドワーフ共が若様を人質に取っているぞ!!』と言った、事実無根の内容ばかりだ。
「あ〜相棒、これ、全員戦闘態勢を取らせた方が良いと思うぜ」
近付いて来たエルザの声に、どう考えても面倒事に直面したと感じたユウキだった。




