174話
「マスター、まもなく街を出ますがよろしいですか?」
リリーナの説明を色々聞きながら考え事までしていたせいで、あっと言う間に外へと繋がる門前へと来ていた。
遠目からも騎馬の一団が近付いて来るのが見えていたのだろう。
周囲を同じ武装をした獣人達に囲まれていた。
囲むと言っても様子見の為といった感じだ。
近付くコチラに対し、猫の獣人の青年が背筋を伸ばして対応する。
その姿に、『猫背って獣人族には無いのかな?』などと失礼な事を考えるユウキ。
チラリとこっちを見る視線に、ちょっとだけ居心地悪く感じたが、出来るだけ表情に出さないようにする。
先頭のエルフが、猫族の青年に何事かを伝えると、驚いた表情をコッチに向けてくる。
『あ〜これは俺の事を伝えたのかな?』
そう思ったユウキだったが、素知らぬ顔をする。
愛想笑いの一つでもするべきなのかな〜などと呑気な事を考えていると、猫族の青年がユウキの前で片膝をついていた、いやチョット待て!!
「我らが王よ、お初にお目にかかります。私の名はジャン。この北門を守る第一警備隊隊長をしております」
「お役目ご苦労さまです。何か変わった事はありませんか?」
唖然としたユウキの代わりに、リリーナが馬上から声をかける。
いや、そうじゃないよリリーナさん、『我らが王』って何さ?俺は王じゃないよ?
って言おうと思ったら、リリーナに口を押さえられた。
ちょっと、喋れないじゃないか!!
「マスター、門を出るまでは我慢して下さい」
何やら真剣な顔でボソッ言われたので、渋々我慢…いや、でも納得いか〜ん!!
リリーナの右手で口を押さえられた状態のまま話が進み、猫族のジャンを筆頭に、全員が剣を掲げて見送ってくれた。
すげぇ、全員一糸乱れぬ動きで、鞘に入ったままの剣を自身の眼前に垂直に立ててる。
カッコイイけど、もしかしてそれ、練習してたの?
何だか色々モヤモヤした感情のまま、騎馬隊は門をくぐり抜けて街の外へと向かっていく。
簡易の門って言っていたけど、本格的な石造りの立派な門だった。
高さは五〜六メートルはありそう。
門の左右には物見櫓が立ち、その上から弓を装備した獣人族が辺りを警戒している。
その割には、獣人の子供達の侵入とかががががが…。
「マスター、今回の件を受けて、全面的警備体制の強化をしていますから問題ありません」
何だか得意げなリリーナの様子から、さっきの門番達、色々言われたんだろうな〜っと予想。
うん、次関わる事があったら労いの言葉でもかけてあげよう…うん。
そんな思いを持ちながら、門の外に掛けてある橋を渡って行くユウキ達一行だった。




