167話
その一部の中でも過激な連中が、数年前に港町へと攻め込み撃退されたんだそうだ。
「あ、撃退されたんだ」
「完膚なきまでにやられたと聞いたぜ」
そんな話をしていると、目の前の獣人の青年は困り顔、後ろの子供達は驚き顔。
「嘘だ、そんなの!!俺達の一族が負けるハズがねぇ!!」
押え付けられてた獣人の子供だけが一人だけ喚き散らしている。
多分、自分達は負けていないって教え込まれているんだろうなぁ、うん。
しかし数年前か…話の感じから、俺がこの浮遊大陸を掌握した時期の混乱を利用したって所かな?
そうして、獣人族同士の争いに負けた彼らは、一族を引き連れて海を渡り、何故かこの城の北側に逃れて来たんだそうだ。
しかしエルザ、そこまでよく分かったね?
え、この獣人の青年が全部ゲロった?…うん、言い方がアレだけど、なるほどと納得しておくよ…次からは『ゲロ』って言葉を使わないでくれるかな?一応女性なんだし、美人が台無しになるから。
…って伝えたら、何故か顔真っ赤のエルザから怒られた…なんでさ?!
「マスターは真正のタラシですね」
あっるぇ〜?リリーナからタラシって言われた、なんでさ?!
俺、本音で話しているのに?!
あ、何かエルフやドワーフにまでため息を吐かれた…解せぬ。
〜〜〜〜〜
『ガンガンガン』と、場内に音が響き渡る。
その音を聞いたドワーフ達が、慌てて防具を着込んで走り出す。
目指すは城中央の中庭。
巨大な木を背景に、三人の人物がそこに立っていた。
その三人の前には、革鎧姿のドワーフ達がズラリと並んている。
「全員集まった訳じゃ無いけど、こんなもんじゃないかな?」
「半分程度ですけど、仕方がないですね。今後は、素早く集まる訓練が必要ですね」
エルザとリリーナの言葉に、一部の者達が青ざめた顔をしている。
「いや、騎士団編成してまだ三日目だよ?そこまで厳しくしなくてもいいんじゃないかな?」
「甘いな相棒」
「マスター甘いです」
何故か速攻で否定されるユウキ。
『何故そこまで?!』との思いはあったが、そこはグッと飲み込む。
『口で女性に適う者無し』は、ユウキの座右の銘だったり…しない。
先程鳴らされたのは、緊急時の合図だ。
鉄の板を使った『鳴子』であり、場内外で働く者達に、異常を知らせる為の物だ。
この合図が鳴ったら、中央広場に集まる事になっている。
それに従い、現在はドワーフとエルフが集まって来ている。
集まったのは、非番を除いた者達で、ドワーフが二十人、エルフが十人だ。
他の者達は、それぞれ場内警備や街中の巡回に行っておりここには居ない。
彼らを集めたのは、城の北側に住む獣人族に、不穏な動きがある為だった。




