165話
そんな無謀な子供の事は置いてきぼりにしながらも話は進む。
ついさっきまで、俺だけ置いてきぼりだったんだけど、やっと話の内容が分かったよ。
目の前に居る五人の子供達が、街中で盗みを働いた…と。
その内容が、『復興の為、一時置き場にしていた資材を勝手に漁っていた』訳だ。
ただ、その資材と言うのが、崩れ落ちた石材や燃え残った家具類ってのが…ねぇ〜。
ドワーフ達もエルフ達も、そこに捨てた訳ではなく、家を建て直すまでの間の一時置き場のつもりだったらしい。
まぁ、最終的には捨てる事になるんだろうけどね。
ドワーフ達もエルフ達も、落ち着いてから使えそうな物を探そうと思ってたようだ。
で、彼ら獣人族の子供達が、その集めた瓦礫の中を漁ってた訳で…う〜ん、困った。
実際、エルフ達もドワーフ達も怒ってる訳じゃない、困惑しているって感じだ。
「獣人族、貴様は罪を認めると言うのだな?」
「は、はい。ですから子供達はお助けを」
ねぇリリーナさん、君は何でそんなに怒ってるのかな?
言葉の端々に怒りが滲み出てるって言うか…。
「良かろう、ならば貴様の首一つで今回の件は許」
「わーちょっと待った!!」
待て待て待て、少し考え事してる間に、獣人族の青年処刑にまで発展してやがりましたよ!!
何でさ?!
「マスター?!」
「いいから待てリリーナ!!」
玉座から降りると、リリーナの前に行く。
うん、コッチを見ている目は普通だな?うん、ガンギマリしてないよな?してたら俺、チョット引くぞ?
「エルザに聞きたい。今回、彼らが瓦礫を漁っていたと言うが、明確な被害があったのか?」
エルザ達が立っている場所が玉座の間中央付近だから、少し大きめの声で呼び掛ける。
おや?エルザが何やらビックリした顔をしているけど。
「いや、瓦礫を掘ってただけみたいだし、身体検査もしたが、目ぼしい物は持ってなかったな」
「そうか…」
つまり、『まだ何も盗ってなかった』と。
「ならば無罪だな」
「「「「はぁ?!」」」」
おぉう、エルフもドワーフも、一斉に声を揃えてきたよ、驚いたぜ。
「へぇ〜」
「お待ち下さいマスター!!そのような事では、街の治安が悪くなるばかりです」
やけに楽しげなエルザと、焦るリリーナ。
うん、何か対照的で面白い…じゃなくて、何故焦る必要が?
そんなにこの獣人族をどうにかしたい…いや、毛嫌いしているのかな?
何て言うか、言葉の端々にそんな棘?ってのを感じるんだが…。
「リリーナ、何故そこまで嫌がる?何を恐れている?」
「マスター、私は恐れてなどいません」
「なら、何故獣人を嫌う?」
目を見開くリリーナを見て確信したよ。
彼女、獣人族に何か蟠りがあるな?




