161話
どう見てもドワーフには見えない小さな人影に、エルザは首を傾げる。
人影の居る場所は、崩れた瓦礫を一時的に積み上げている広場だ。
割れた石や焦げた木材、他にも使えなくなった家具類等が積み上げられている。
とは言うものの、物によっては修理出来れば再利用が可能な為、一時置き場にしているだけだ。
当然ながらコレらは、ここに住むドワーフ達の資産の一部になる。
そこに、ドワーフ以外の人影があれば怪しいと言うモノ。
「ふむ…各人散開、包囲しろ」
後ろに居たドワーフ達が人影に気づいたようだったので、素早く包囲するよう指示を出す。
相手はまだ、こちらに気付いていないようだ。
少しの間、その場で腕を組み包囲が完成するのを待つ…そして
「おい、そこのヤツ、何をしている?」
エルザの鋭い声に、人影がビクリと反応する…が、
「ヤバイ、見つかった!!」
「逃げろ!!」
「お、お兄ちゃん?!」
「!!」
「ひぃ!!」
「早く早く早く!!」
小さな人影は五つに別れて、それぞれ別方向へと逃げようとするが…
「ほい、まずは一人」
「いやあぁぁ!!」
「リュカ!!」
ポテポテとゆっくり走る…いや、走るというより早歩きと言った方が良いようなスピードの『子供』を捕まえる。
そう、子供だ。
どう見ても五〜六歳と言う所だろう。
さらに声から女の子だ、これは手荒には出来ない。
「くそ!!リュカを離せぇ!!」
捕まえた女の子よりも一回り大きい男の子が、クルリと方向を変えてコッチへと向かって来る。
うん、男の子だねぇ〜その意気や良し。
大きく振りかぶった右手首を掴むと強く手前に引く。
それだけで男の子の体勢が崩れ、大きく前に流れて行く。
その腰に手を入れて持ち上げる。
「ほれ、二人目っと」
「くっ?!離せ!!離せよ!!」
「お兄ちゃん?!」
ジタバタと暴れる男子の子と、悲壮感たっぷりな顔した女の子をそれぞれ脇に抱える。
周囲を見渡せば、他の三人の子供達もドワーフ達によって捕まっていた。
捕まった子供達を観察すると、反応が三つに分かれる。
一つ、ガックリと頭を下げてシクシクと泣き出す者達。
二つ、自分の妹を助けようと藻掻く者。
三つ…
「お前ら、オレ様にこんな事してただで済むと思うなよ!!」
大声で騒ぎ立てる者。
「はぁ…まったく、困ったガキ共だ。さて、どうしたもんかねぇ〜」
エルザが、つまらなそうに呟くと、大声で捲し立ててた子供が、即座に反応する。
「てめぇらなんかなー、オレ様の親父が天下取ったら、すぐに殺してやるからな!!絶対だぞ!!」
さすがにその言葉は見逃せないと、騒ぐ子供を目の前まで吊り上げる。
エルザの眼光に『うっ?!』と怯んだ子供だったが、すぐに威勢を取り戻すと、決定的な台詞を吐いてしまう。
「お、オレ様の親父はなぁーこの地最強なんだぞ!!お前らみたいな弱っちい奴ら、ブッ殺す準備は終わってんだよ!!弱っちい人間なんぞに尻尾を振る連中がぁ!!」
最後の台詞を言った瞬間、猛烈な殺気が周囲を包み込む。
勿論、発生元はエルザだった。
「ほう、面白そうな話だな。小僧、詳しく聞かせてもらおうか?」




