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160話


「本当に魔物が一切存在しないと認識して行動した方が良いかもしれないわね…」


心を改めると、周囲の状況確認を第一目標に定める。

人族、特に人間族しか見当たらないとなると、特にだ。


「この異世界の人間達が、マスターに取り入ろうとする…いや、もしかしたらマスターに害する可能性も大いにありえる」


リリーナは、ユウキ以外の人間族という者達を基本信用していない。

それは過去、有翼族が珍しいというだけで人間族に攻められた歴史があるからだ。


もっとも、その歴史は千年以上も前の話になるのだが、それでも長寿である有翼族にとっては、忘れられない歴史だ。

この百年程で、有翼族に対する認識は変わったようだが、それでも信用出来るかは別物だ。


そんな部分が、人間族に対する有翼族の高圧的態度に繋がってしまうのだが…。


「広範囲の人間族に対する警戒網を作り上げるには………やはりマスターのお力をお借りするしかないですね」


暫く考え込んでいたが、すぐに引き出しから紙を取り出し、今思いついた案を記して行く。

最初に書かれた題名は『精霊達の協力による情報収集の許可』だった。



〜〜〜〜〜


「へぇ、もう建物の復興作業に入ってるんだね」


城の正面、大通りを歩くエルザは、後ろにいるドワーフに話しかける。

場内にいると、書類整理がまわってくるので、『周辺調査とドワーフ達の訓練に行ってくる』と称して飛び出してきたのだった。


普段のサボりであれば、この大通りから一歩奥へ入った通りにある馴染みの店へと向かうのだが、残念な事に全壊、あるいは半壊している為、とても休めるような状況ではなかった。

当然ながら酒の一つも無い。


「はぁ〜、まったくつまらないねぇ〜」

「いやいやエルザの姐さん、今の時期はしょうがないでしょう?」


エルザの後ろを歩いていた若いドワーフがそう答える。

彼らは、訓練所で素振りをしていたのだが、エルザに連れられて街中へとやって来たのだった。


「これも訓練の一貫だ」との事だったが、今の台詞で暇つぶしなのだとバレてしまっている。

とは言うものの、今更戻っても仕方がない…と諦めて、大通りを歩いていく。


街中は、瓦礫の撤去が終わり一段落ついた状態だ。

ロープのような物で枠幅を決め、土台部分の作製に掛かっている所もある。


浮遊大陸が落下してから七日目と考えれば、まぁ早い方だろう。

街中も復興に向けて活気がある。


そんな事を思いながら大通りを歩いていると、建設途中の敷地内で動く小さな人影を見つけた。

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