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159話


この書類を持って来たのは、個人的繋がりのある女性エルフ達だ。

彼女達には片付けは他の者達に回し、この浮遊大陸が落下したその日から、浮遊大陸周辺の大陸での偵察をお願いしている。


とは言っても、直接現場に行く訳ではない。

彼女達は光系の精霊と契約しており、その力の恩恵により遠くの物体を見る事が出来る。


もう少し浮遊大陸内が落ち着けば、外部への本格的な調査に出たい所だが、今はまだその時では無い。

そうして映し出された映像を元に、見たままの報告書を出すように頼んでいた。


その中間報告書が来たので軽く目を通した所、多数の都市と人間族を発見したと書いてあった。

北と東と南、三方向に大きな港があり、帆船の出入りも確認したとの事。


帆船が出入りしている、つまり、何時でもコチラに接触してくる可能性があると言う事だ。

それよりも何よりも、『人間族以外の種族が見当たらない』と言うのが問題だ。


可能性はいくつかある。


自分達のような有翼族やドワーフ族、エルフ族と言った者達が、海岸線付近に住んでいない。

有り得そうな話ではあるが、絶対に無いとは言えない。


事実、自分達の居た世界、アルテミア大陸では、海岸部に住むエルフやドワーフも少数だが居たし、何より『海洋族』と呼ばれる種族も存在した。


『海洋族』とは、海に適応した種族で、頭部が魚で人の手足が付いている。

アルテミアの世間一般的には『人魚じんぎょ』と呼ばれる種だ。


人に近い形を取る者達程、実は危険な存在になる。

彼ら彼女らが、人間族に近い見た目をしているのは、相手の油断を誘う為だ。


人の上半身に誘われて近付いた所を捕食する海の魔物。

一応、この浮遊大陸内に住む海洋族は、姿形は兎も角、人族に友好的な為、魔物として見られてはいない。

アルテミア大陸海岸部に生息する海洋族には、魔物として認識されている者達も存在する。


しかし、この世界の海岸部で、その手の種族の発見報告が無い。

これはあり得ない。


魔物として認識されている側の海洋族であれば、大きな港町の近くに小さな隠れ家を作って生息している事が多い。

これは、アルテミア大陸での常識だ。


港町であれば、酒に酔った勢いで海辺に近付き、海の魔物の餌食になり易い。

逆に小さな港であれば、周囲の変化に気を付けないと、いきなり大量の海の魔物に襲われる事もある。


船が襲われる事もある為、海洋族は恐ろしい魔物に分類されている。

まぁ、『魔素が存在しない』と精霊達から報告が上がって来た時点で、魔物が存在しない『可能性』も考えてはいたが…ここまで完全に見当たらないとは思ってもみなかった。


『ユウキには魔物が一切いない』と言い切っていたが、実の所リリーナは、何処か辺境であれば、魔素を頼りにしない魔物が存在するかもしれないと考えていた。

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