15話
『俺、どうにもさっきから同じ事ばかりしているな〜』
額に手を当て、思わず上の方へと顔を向ける。
冷静になろうとしているのに、どうしてか思いつきで行動してしまう。
『これって…体に精神が引っ張られているとか言うアレか?』
天井に視線を向けながら考え込んでしまう。
その視線の先には、立派なアーチ状を形作る天井と、それを支える柱、補強するように梁が掛かっている。
柱には、天井に向かって体をくねらせている『龍』が掘られている。
蛇のように長い胴体が、柱に巻き付いているかのような感じだ。
梁の方には横向きに、その巨体を休ませているかのような姿勢の『竜』が掘られている。
首こそ持ち上げているが、背中にある翼を折り畳み、優雅に休んていますとでも言うような感じだ。
ゲーム内では、この二種類のドラゴンが存在している。
生息地が東と西に分かれており、ゲームのマップでも東側のダンジョンに行けば、体が蛇のように長い龍が、西側のダンジョンでは、体の大きな竜が登場する。
所謂『東洋系』と『西洋系』のドラゴンだ。
東と西で種類が違うが、それぞれ得られる素材が違う上に、両方の素材を手に入れないと作れない武器防具等もある。
市場では、滅多に出ないが、出ればどちらも高値で取引される素材だ。
そんな二種類のドラゴンが、それぞれモチーフにされ、精巧な彫刻で掘られている。
思わず、目が釘付けになる程の出来だ。
そんな柱の向こう側、今通り抜けて来た『空中庭園』の反対側は、城の中心部になっており、そこは大きな吹き抜けになっていた。
ゆっくりと吹き抜けに向かって歩いていく。
吹き抜け部分は、一片が百から二百メートルはあるだろうか、かなり広い空間になっている。
つまりこの城は、外側から見ると真四角の建物、『某なんちゃらクラフト』でよう言う豆腐建築と呼ばれるような造りだが、中は違う。
上から見れば中心部分が吹き抜けの『ロの字形』をしている。
その吹き抜け部分の中央には。背の高い杉の木に似たものが立っている。
見た目こそ杉に似ているが、目を凝らして見れと、小さな色とりどりの花が咲いている。
どうやら杉とは違う種類らしい。
その木の周辺は、ドーナッツ状の地面が見える。
『これが楕円形だったら学校とかにあるグランドみたいだな』
上から見下ろすと、そんな感じに見えていた。
そして円形の外側、壁際には、ここにも色とりどりの花が咲いている。
ゲーム内では無かった設定だ。
ゲームだと、城の正面から入れば、そこは大きなエントランスホールになっていた。
天井には巨大なシャンデリアが備えており、二階に上がる階段や、別の部屋に移動する為の扉が左右にある。
実際に移動する際は、階段手前や左右の扉前にある円筒状のエフェクトに振れるだけで良かったのだが『リアルなこの世界』ではそれが無い。
そう、『マップ移動や切り替え』なんてものは存在しないのだった。
『そうだよ当たり前だよコンチクショー』
吹き抜けの中庭側にある手摺により掛かりながら、脳内でツッコミを入れる。
どうにも、未だにゲーム感覚が抜けていないようだ。
そもそも、移動先がパッと現れるなんて事は無い。
移動するなら扉を潜り、通路を抜けて行かなければならない。
つまりは
「やべっ、道が分からない」
折角、指揮所に行けば色々分かると思っていたのだが、肝心の指揮所への行き方が分からない。
ゲーム内では、エントランスホールから左右どちらかの扉前に行く事で、奥の間と呼ばれる所へと移動する。
ついでに言うとこの移動する際『ローディング画面』が数秒表示される。
画面右下に『ろ〜でぃんぐ』と平仮名表示がされ、一枚絵が現れる。
先程まで居た空中庭園や、今居る通路等が、この時表示される。
空中庭園の場合は、斜め植えから見下ろした感じで表示される。
通路は、この中庭側から見た絵になっている。
その際、手摺部分が写っていないので、吹き抜けがあったとは知らなかったのだった。
その一枚絵と同じ風景がある事に、少し感動していたユウキだった。




