154話
「それと、武具だけでななく、回復薬も当分の間作らない」
続けてそう言うと、場がざわめく。
ただし、ざわめいているのはドワーフ達だけであって、エルフ達の方は静かなものだ。
静か過ぎて、何やら薄気味悪いんだが…。
「回復薬を作らない理由は武具と同じだ」
「つまり、売る相手がいないからと?」
「まぁ、そんな所だね」
そう言って肩をすくめると、エルフ達は『なるほど』と小声で喋りながらうなずいている。
『何故』を連呼しながらざわめいているドワーフ達との対照的な態度が、一周回って段々と面白くなってきた。
「ただし、浮遊大陸内で販売する分であれば作製を許可するよ」
とは言え、少しはガス抜き部分を作っておかないと。
そう思って一言追加すると、ざわめきが更に大きくなる…主にドワーフ達の。
君ら、そんなに武具が作りたいわけ?いや、いいけど…。
「ふむ、それでは下級回復薬を中心に、少なめの作製を目指すとしましょう。その方が作成費が少なくて済むでしょうし」
顎に手を当てたフェアラスがそう言うと、エルフ達が『一日の数量はいくらにするか』との相談が始まる。
凄いねエルフ、たったあれだけの情報で、アッサリと次の行動に移るとは…。
それに比べてドワーフ達は…。
「ぬぅ!!浮遊大陸内のみか」
「いや、それでも武器が作れるのなら問題は無い」
「しかし、高価な防具なんぞ早々売れるもんじゃないぞ。お前さん達、今更下級武器なんぞ作れるのかの?」
「「「ぐぬぬっ」」」
こっちはこっちで何やら悩んでいる様子。
まぁ、浮遊大陸内で、高い武器や防具を頻繁に買うなんて事は無いから仕方がない…かな?
「おうドワーフ共安心しな、仕事ならコッチで用意してやるからよ」
ぐぬぬっと唸るドワーフ達に声をかけたのはエルザだ。
しかし仕事?何で?
「あ〜相棒、心配すんなって。内容聞けば、コイツらだって納得するハズだからよ」
いや待て!!
そう言われて安心出来るか?
内容を俺にも話せ!!じゃないと安心どころか不安材料にしかなり得ないわ!!
「コッチの話し合いが片付いたら報告するよ」
違う違うそうじゃない!!
俺が欲しいのは『後からの報告』じゃなくて、『何をするつもりかの連絡』だ!!
分かる?『連絡』と『報告』の違い。
『事後報告』って言葉はあっても『事後連絡』なんて言葉は無いだろ?
事前連絡って言葉があるように、やる前に教えて欲しいって事だからな?
「まあまあ、細かい事を気にすんなって、ハゲるぞ?」
喧しい!!




